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いもたつLife

静岡市美術館 「起点としての80年代」


80年代は、今日の美術につながる重要な動向が生まれた時代で、時代がバブル景気に向けて加速し、消費文化が花開くなか、現代美術の世界でも70年代までのコンセプチュアルで禁欲的な表現から、自由奔放で多様な作品が一気に生まれた。
そういうことで、その80年代を代表とする絵画や彫刻やプラモデルといったら失礼ですが、所謂アートが展示されていました。

芸術家の内面、その時代に感じていたものが表現されているのですが、どれも前衛的というのが印象です。

作家は断層の世代の方が多く、展示を観ていて、これまでの団塊世代の表現や、考えを、覆すということが潜在的にその断層世代の作家たちにあり、それが強い力となり引き金となっているのではないということを強く感じました。

【いもたつLife】

日時:2019年03月27日 12:55

【spac演劇】妖怪の国の与太郎 ジャン・ランベール=ヴィルド、ロレンゾ・マラゲラ 演出

一応筋はあるのですが、設定された制約の中でやりたい放題の喜劇です。
その設定も制約も自由度があるものですから、たくさんのアイデアを出して、面白いものを選びてんこ盛りにした劇でした。

今年一番の馬鹿馬鹿しい死に方をした与太郎が魂を無くしてしまい、それを探すというのが筋で、黄泉の国を彷徨うということなので、色々な妖怪に合います。
黄泉の国ですから制約も緩くとにかく与太郎が魂を探すロードムービーのようです。

馬鹿馬鹿しい死に方とは、夏に口を空けていたらミンミンゼミを飲んでしまったからというもので、与太郎が彷徨い歩く途中で起こる妖怪たちとおやりとりも万事、こんな感じでくだらないギャグの連続でした。

ということなのですが、とにかく美術部は大変だったでしょう。
色々な妖怪の衣装や小道具が次から次へと出てきます。それを7人の俳優がとっかえひっかえで、俳優も着替えだけでも何回やったことでしょう。
馬鹿馬鹿しいこともこれだけ揃えれば立派な出し物にあるなあと感心します。

オチは与太郎が魂をもう探さなくて良いや、のんびりしよう、としたところ、魂が戻る。そう、のんびり生きれば良いよ、ということでした。

妖怪たちの自由自在の様と、なにか悩んでいる与太郎との比較が、結構皮肉で、個人的にはたまには弾けた方が良い生き方ができると痛感しました。
でも面白かったです。

追伸
3/6は「啓蟄」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「啓蟄」の直接ページはこちら
啓蟄

【いもたつLife】

日時:2019年03月06日 12:58

【spac演劇】顕れ 宮城聰 演出

三週連続で、今回は千秋楽の「顕れ」でした。
一回目は、内容を追うのに必死で、二回目は余裕があるかなと思いながらの観劇でしたが、三回目こそ余裕が本当に出てきたという感じでした。
また前二回は正面で舞台近くの席が、今回は袖の高めからの席で、違った角度から、全体を見渡せるのも、俳優さんの動きが全体的に追えてよかったし、新鮮でした。

まあそれにしてもこの「顕れ」、SPAC演劇の集大成の要素が詰まっています。
宮城演出の特徴である、ムーバーとスピーカーがイニイエ女神で、力強いスピーカーに、優麗なムーバーの舞です。
また、4人ずつで登場するマイブイエとウブントゥの台詞は、複数人だからこその声を重ねるこちらもspacならではです。
俳優達の鍛えぬかれた動きは時にパワフル時に壮麗でもあります。
そして、俳優自らの打楽器を中心とした演奏も、また美術も凝っているしで、見どころは付きません。
内容は重たいですが、時折ユーモアが入るところも宮城演出らしいです。

観終わって、もう一回みたい、再演があるかはわからないもで、もうみることは出来ないのは残念としみじみ感じました。

これから出来るかぎりspacの新作は3回は見ようとも決めました。

【いもたつLife】

日時:2019年02月07日 09:29

【spac演劇】顕れ 宮城聰 演出

少し世界史をかじるだけで、今まで人々が多くの過ちを犯してきたことは枚挙に暇がありません。奴隷貿易もその中の一つで、多大なる負の歴史です。
その犠牲になったアフリカの、現地の、奴隷貿易に係わった人達を掘り起すというとてもデリケートな題材を扱う原作の演劇です。
アフリカを搾取した方をテーマにしたのではなく、不本意までも搾取に手を貸してしまった人の陳情がメインとなっています。では誰が陳情するのかというと、国を守るために仕方なく搾取側と友好関係を結んだ国の王や、自分(自国)の利益のために仲間を売った者、奴隷から抜け出すために背徳行為をした者等々の魂が創造主の神イニイエの命で、彼らに無残な一生とされてしまったウブントゥという彷徨える魂の前で語るのです。

劇はそこへ向けて、イニイエがいる世界の舞台設定の説明からはじまり、奴隷貿易によりウブントゥや罪人たち(皆魂です)がどうしているかという黄泉の国で繰り広げられます。

今私はこの現代の日本に生れて暮していますから平和で安住です。命や人権を平気で搾取される時代や場所にいないのですが、それは偶々でしかありません。
人が人を人として扱わない、強い者が弱者を食い物にすることは歴史では珍しくもなんともなく、その時と状況が揃えば、自分が搾取される側であったり、搾取する側で人でなしになっていても不思議ではないでしょう。
イニイエの前に立たされる立場でないのが偶々なのです。
誰もが鬼になるやもしれません。

それほどに人は悪の面があり、良心なんて脆いものです。人は善か悪かと問われれば究極は悪、切羽詰まれば悪魔に魂を売るのが人とも思えます。

この「顕れ」は、それでも人は善であることを謳いあげていました。
原作者も演出家も俳優達も裏方スタッフも全員でそれを信じて造りあげた芸術です。その想いが罪人の陳情が行われる後半からラストにかけてひしひしと伝わってきました。

spacの演劇はいつも唸らされるのですが、「顕れ」もそうで、とても感動し、みせてくれることに本当に感謝したくなるカーテンコールでした。

【いもたつLife】

日時:2019年01月30日 09:12

【spac演劇】顕れ 演出:宮城聰

奴隷貿易を題材とした、魂救済と、人類の歴史で何故悲惨なことが起きてしまうのかがテーマです。
その奴隷貿易の題材部分は、加担したアフリカ人の魂に陳情させるというものです。
ですから舞台は黄泉の国です。

生命創造の女神イニイエは輪廻する魂マイブイエ達のストライキを受けています。新しく誕生する命(人)の魂にはなりたくないとマイブイエが言うのです。
訳は輪廻できなくなってしまった魂ウブントゥ達の嘆きを知ってしまったからです、ウブンドゥは奴隷貿易で不幸を味わい悲惨な死によって成仏できずに彷徨っていて、成仏するには奴隷貿易に加担した大罪人達の魂の告白を要望していて、マイブイエはそれをイニイエに直訴します。

大作に仕上がっていました。
いつもながら感心するspacの美術です。そして舞台装置もです。
神々しいイニイエの登場からしてワクワクします。その後狂言回しのように劇の説明が入り、3種類の魂が登場します。
マイブイエ、ウブンドゥ、そして大罪人、それらの衣装も凝っていて、spac独自の打楽器を中心にした音楽が後押しでこの劇も紛れもない宮城演出です。(イニイエもムーバーとスピーカーに別れています)

人の存在を問うていく進行が壮大な物語の中で繰り広げられます。
正直一度の観劇では圧倒されるばかりでした。もう一回予約してあるので、腰を据えて味わうのが楽しみになった一回目の観劇でした。

【いもたつLife】

日時:2019年01月22日 09:32

【spac演劇】歯車 多田淳之介 構成・演出

芥川龍之介の最晩年の「歯車」をspac総監督の宮城さんが、多田さんに演出を依頼して誕生したのが、spac版“歯車”とのこと。演目も演出家も宮城さんの指名です。
さてその内容はですが、凡人よりも世界が観えてしまう芥川の苦悩が、目に見えないはずのその感覚が、舞台上に駆け巡る、そんな劇でした。

俳優は6名、その6名は主人公が見えるモノであったり、主人公の精神世界であったり、時には主人公自身と触れ合う家族や人物だったりするわけですが、主人公にとっての生き難さであることは終始一貫しています。

舞台セットも主人公の不安定さを具現化した交錯した傾いた床で、原作からの台詞の朗読が随所にあり、それがスクリーンに映し出され、最後に崩れるという、セットを含めて流れは常に不安を煽っています。

音楽も勿論主人公の心情を表すのですが、それは彼の中で囁かれる場合と、他者に対しての場合と、他者や外の世界からの場合で、音源と方向を変換させています。

まさに狂おしさを2時間味合わせてくれますが、要所ではユーモアがあり(音楽も含めて)、息抜きっせてはくれますが、まあ、なんと主人公は生きることは辛いことだを味わっていることを感じさせ、それは観ているものに感染していまいます。

芥川はきっと常人が使える脳みそとは段違いに使えた人ではないかと思えます。その使える分、物凄い量と質の作品を遺したのは事実で、その事実の影には、他者では見えることがない私達がいる世界の行き末や、人が生きることの難さも物凄く受けてしまったのではないかと舞台を観ていて感じていました。
芥川は若くして逝ってしまいましたが、生ききった末の死だったかもしれないとも感じました。

【いもたつLife】

日時:2018年12月17日 12:42

【spac演劇】授業 西悟志 演出

この西演出のSPAC版「授業」は生徒(布施安寿香)がエネルギッシュで、虐げられる女の抵抗を強く感じます。
教授も強力で、教授役は3名、強権発動するいかにも教授(渡辺俊彦)、若手でこちらも生徒に負けないエネルギッシュな教授(野口俊丞)、もう一人道化のような変化球の教授(貴島豪)(アフタートークで、この3人目の教授はジョーカーと内内で呼ばれていたそうです)、三位一体で不条理に生徒に挑みかかります。

冒頭から教授はただものではない雰囲気がありますが、生徒を迎える本当の最初は、その辺のオジサンだったのが段々エスカレートしていきます。生徒に我慢ならなくなり本性が露になるのですが、その悪魔の本性は生徒に挑発されてそれが湧き上がるのではないかと想えたのですがそうではなく、実は誰が相手でもどこかでそれが発動してしまうことが解り、怖ろしい事実で、これは日常にあるのだというメッセージがとにかく怖いです。
でも舞台上はユーモアを効かせています。

基本は生徒と教授の二人劇、それを4人の俳優が演じているのですが、要所に醒めたメイド役が出るのが、この授業の特色でもあります。
メイド役ではありますが、役者としてクレジットされていない裏方の女性で、教授に醒めた台詞を投げかけます。
その台詞と態度は教授に心底ウンザリで、一徹した雰囲気です。
そうなんです。この教授はウンザリするオジサンなのです。
それに抗う生徒を演じた布施さんにエールを送り続けたくなる劇です。

人はやりすぎる生き物で自制がきなかい。
男は自己満足をどこまでも追求する。
愚かしいばかりなこの教授は他人事ではありません。

【いもたつLife】

日時:2018年10月28日 12:37

【グランシップ寄席】 春風亭一之輔・玉川奈々福・神田松之丞

落語、講談、浪曲という日本の三つの和芸を楽しもうという粋な企画です。

開口一番は前座の柳家あお馬さんの「子ほめ」。
滑舌もリズムもよく、すぐに二つ目になりそうな噺っぷりでした。

続いては松之丞師匠です。
演目は「雷電初土俵」ですが、時折挟むアドリブが場の的を射ていて場内が湧きに湧きます。
丁度一年前に松之丞師匠を観ているのですが、さらに腕が上がっていました。

続いては一之輔師匠の「百川」、そして仲入りを挟んでもう一度一之輔師匠の「がまの油」です。どちらも面白いし、好きな演目ですが、一之輔アレンジでもう大爆笑でした。

トリは浪曲の玉川奈々福師匠です。浪曲は初めての体験でしたが、そういうお客様が多いことを踏まえて、浪曲の解説と、楽しみ方と嗜みを、ユーモア込めて玉川奈々福師匠が枕で話してから本番です。
静岡にゆかりがある話ということで、「大井川乗り切り」です。
圧倒的な声で魅了されます。
ところどころの台詞回しは演劇のようです。そして、三味線の伴奏と相槌も見事です。
浪曲侮りがたしでした。

三つの和芸を満喫できました。

【いもたつLife】

日時:2018年10月21日 11:15

花緑の夢空間 第16回

静岡市の駿府城公園で恒例の柳家花緑独演会です。

二つ目の花飛(かっとび)さんの「新聞記事」からスタート。
花飛さんは前座名は、ふらわー(どういう字かは不明)で、前座は仮の名で、
それをカリフラワーと言うという枕も、本番も面白かったです。

花緑師匠はノリノリの枕から「試し酒」、昨年聞いた「猫の災難」でもそうですが、酒を飲まない花緑師匠の酒飲みぶりは必見です。

仲入りを挟み、またまたノリノリの枕から、「井戸の茶碗」、終演まで15分で井戸の茶碗は驚きですが、それだけ師匠本人も言っていましたが、この落語会は、ついつい枕でしゃべりすぎるようです。
ちょっとはしょった「井戸の茶碗」でしたが、もちろん面白い、師匠のこの演目は2度目ですが、前よりもメリハリある落語でした。

追伸
10/8は「寒露」です。二十四節気更新しました。
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干し芋のタツマ
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寒露

【いもたつLife】

日時:2018年10月08日 09:17

柳家花緑 独演会

静岡市の江崎ホールで、平沢寺主催のこの落語会も今年で17回目、
私も一昨年から参加させて貰っています。
花緑師匠の落語会は2月以来です。

まずは二つ目の圭花さんの「松山鏡」、
圭花さんは、昨年のこの落語会でも、2月の落語会でも聞いています。
だんだん上達がわかります。11人のお弟子さんのうちの9番目だそうですが、
お弟子さんが上手くなる様を追えるというのも楽しいものです。

その後はもちろん花緑師匠で、いつもの通り枕からノリノリです。
仲入り前のこの時間では枕を挟みながら、花緑師匠にしては珍しい、
新作2作でした。
最初は「謎のビットコイン」(多分)という噺で、5分位の短い落語。
「やかん」をコンパクトにして現代にもってきたような噺で、
リズムも良く楽しい演目でした。
続いては題名はわかりませんでしたが、こちらの新作は師匠が顔芸と声色を
様々駆使した花禄師匠ならではの新作でした。

仲入り後は大ネタの「柳田格之進」。
まさに“たっぷり”と声を掛けたくなるほど力が篭っていました。

花緑師匠は静岡にはよく来てくれます。次回も楽しみです。

【いもたつLife】

日時:2018年07月11日 09:09