いもたつLife
SPAC演劇「マハーバーラタ」演出 宮城聰
婚礼で始まり、婚礼で終わりますが、
宴の盛り上がりは雲泥の差です。
観客も最初の婚礼では他人行儀ですが、
ラストは、ナラ王と苦楽を共にした後ですから、
身内としての嬉しさで盛り上がりました。
この演劇は終始笑いが絶えませんでした。
宮城總さんのユーモア溢れる演出です。
ハッピーエンドを予感させます。
そして、そのユーモアは古くからの日本文化と、
近い昭和の頃の日本語を意識しています。
どちらも日本語に託して日本語を大切にして表現されていました。
挿入される歌やギャグは昭和の、
長台詞の言い回しは古くからの日本文化を想わせます。
時に任侠風にも映る場面は、それも劇全体を通してみると、
活性していた頃の村の良さの要素であったことがわかります。
村社会が婚礼を挙げる時の祝いに他の村が駆けつける、
そんな連想もラストにはあります。
それはナラ王が諸国を回り成長したことと重ねています。
私たちは村の中でひとつひとつの役割がありました。
時にその役割を逸してしまうこともしてしまいますが、
遠回りしてまた元に戻ります。
きっと一人前というのは多かれ少なかれ一回りして
役を全うするのでしょう。
それができることができる人に対してのお祝いという儀式、
この演劇ではその楽しさを目一杯に表現しています。
社会の中で生きる以上、
私達は関わる人からの承認と祝福は不可欠です。
そのお祝いは盛大に、今も行った方が、当然良いに決まっています。
【いもたつLife】
SPAC演劇「ペールギュント」演出 宮城聰
素晴らしい感動しました。
レベルが高く、咀嚼できたことがきっと限られていると感じるばかりですが、
とても良い時間でした。
二幕に別れていて、一幕では、
ペールギュントがどうなるか、と、
双六をやっている人が何をしたいのか、の二重構造ということを示唆します。
ペールギュントは、
何でも出来る力があるのか。
ただ足掻いているのか。
双六をやっている人はペールギュントに何をさせたいのか。
ここで幕間でした。
一幕からの予想以上の波乱と、
人が持つ幻想への警告が用意されていた舞台へと二幕は進みました。
一幕からヒントはありましたが、
日本の近代史と重ねて演劇は展開されます。
重なっているのは罪です。
個の欲望とも重なっていました。
主人公ペールギュントは、いつも求めています。
満ち足りることを怖れているように映ります。
自己を確認しないといられません。
それが行動の優先になっています。
この演劇の、
今おかれている我々の、
人が持つ永遠の、
テーマです。
この演劇ではジワジワと繰り返しそこに迫ります。
そして、ペールギュントは破滅を迎えるのですが、
そこに待っていたのは自己否定されることでした。
ペールギュントは、必死に生きてきました。
生きるために、魂をも売りました。
人は物理的に生きる場面では、相対でしか計れません。
その奥の自己を守るという精神的な部分も、
おかれた環境の相対でしかいられないことも
必死に生きる中で語ります。
ペールギュントは、物理的な死とともに、
自分が自分自身でないことを悟り精神的な死を迎えます。
ペールギュントの母はサイコロをふって彼を動かしていました。
父親は世間でした。
二人からの超自我がペールギュント自身でした。
最後の場面では、光輝く扉が開きますが、
そこをくぐることはありません。
そこをくぐれないことは、絶望ではありませんでした。
もう一度ペールギュントは、振り出しにおかれます。
復活です。もう一度試練へと進む一歩目に立ちます。
そして幕。
幕の後、出演者全員で、力強い、
強い強い演奏を披露してくれます。
出演者個々のソロを交えて。
この演劇では(少なくとも私は)観客は一度死を迎えます。
そして復活します。
それを叱咤激励する力強い演奏です。
これからの人生を応援されて送り出された感動の演奏・舞台でした。
【いもたつLife】
ほしいもの試食
ほしいものお取引先の「しずてつストア」で
干し芋の試食販売を今月2店舗でやらせてもらいました。
(セノバ店・草薙店)
シーズンオフだったのですが、
なかなかの盛況ぶりでした。
2店舗ともに準備してあった試食用は早々になくなってしまい、
急遽、商品を空けて試食してもらいました。
秋になったら、また再開しようと思っています。
【いもたつLife】
志らくのピン~古典落語編~
二つ目のらく兵さんが一席、
志らく師匠がたっぷり三席、
仲入りもソコソコの二時間半でした。
らく兵さんは、四月に二つ目に昇進したばかりとのことですが、
なかなかの腕前でした。
その二つ目昇進の話を、志らく師匠は枕につなげます。
前座の頃の、談志師匠との話です。
志らく師匠の談志ネタと談志マネが上手くて、楽しくてです。
亡くなってまだ半年ですが、
こういう枕も変化して行きそうです。
「たぬき三部作」
狸の札、狸の鯉、狸賽と続けました。
助けられた子狸登場の場面が、
先代小さん師匠を想わせます。
小さん師匠の域にはまだまだですが、上手いです。
談志師匠ゆずりのアクの強さは当然醸し出されていますが、
志ん朝師匠の様な鮮やかさがあり、
小さん師匠にもですから、かなり器用で芸達者です。
「唖の釣り」
志らく師匠の意気込みを感じます。
現代では滅多に高座にかけないネタでしょう。
それを躊躇なしに、
全力で、唖を演じます。
この精神は談志師匠のようです。
「お直し」
志ん朝師匠の「お直し」は芸術でした。
それと比べてはいけないと思いつつ、
比べてしまいます。
それだけレベルが高いです。
この話は、
ダメ旦那がどこまで己の愚かさを最後に悔いて、
ダメ旦那を捨てきれない女房が、
悔いる旦那に惚れられていることを確認し、
それがあればどんなに哀れでも我慢できる、
を最後にどれだけ表現するか、
それを話中延々と仕込む落語です。
それを忠実に再現しています。
ブレがないんですね。
志らく師匠、まだまだ上手くなるでしょう。
【いもたつLife】
2012年5月 治作
* 若狭のわかめ
春を最初に演出してくれます。
今が旬の海の味覚です。
さあ、今宵の宴がはじまる香りを運んでくれました。
* 酢の物
ミルガイ、蕗、焼きナス、はすいも(青ずいき)
親方曰く、「夏の先取り」とのこと。
あいにくの雨だったのですが、この酢の物で、
さっぱりさせてくれます。
わかめに続くミルガイの海の味覚、
香ばしい焼きナスに、青いものが合います。
酢の加減がよく、食欲をかきたてます。
* 鮎飯
食欲が沸いたところで、ご飯を少し。
しかも鮎飯。
この量しか出してくれないのを怨みたくなる美味しさです。
香りよし。苦い旨みあり。身の美味しさあり。ご飯と相まって最高です。
塩加減もよし。です。
* お造り
平貝、アオリイカ、カツオ、カツオの皮の炙り、アジ
言い遅れましたが、今宵の料理の友は、
「13by山廃純米」です。
カツオの皮の炙り
塩味利いていて、皮とカツオの美味しさがストレートに味わえます。
味が詰まっています。
13by山廃純米も真骨頂で応えます。
アオリイカ
ねっとり甘い。肉厚ですが、包丁が丁寧に入っているので、
食べやすく、とろけるようです。
コリコリの食感と後から貝の味が醸されます。
今晩の最初からの海の風味も感じます。
カツオ
さっきのアオリイカとは違う感覚で、
口の中でとろけます。
カツオの味なのですが、その味がとても上品なのです。
カツオは好きでよく食べるのですが、
さすが治作のカツオは違う!
と叫びたくなる絶品です。
アジ
こちらはアオリイカとは違うねっとり感覚があります。
今回のお造りでも、くどい系の演出があり、
他が引き立ちます。
もちろんアジ自体も新鮮で、アジらしく、
これも二切れでは殺生を言いたくなります。
このままこれだけで酒を飲んでいたくなります。
* お椀(ヨモギのくず豆腐)
お椀があるからお造りに決別できます。
まず汁をすすります。
恍惚になります。
薄味だから汁のおいしさが直線でわかります。
次に、ヨモギ豆腐、蕗、コノコを単体で味わいしっかりと
受け止めて、
次に、一体で食べてこのお椀の美味しさを満喫します。
一気に食べてしまいました。
(コノコを少し残して、山廃純米をチビリとやりましたが…)
* 八寸
九条ネギの酢味噌がけ(ホタルイカ、アオリイカ)
ネギは大好きな野菜です。
いつもはワイルドにそのまま食べることが多いのですが、
しっかりと料理になっているネギはまた格別です。
今回、春、初夏を感じる料理ですが、
これはそれを強く感じます。
酢味噌のうまいってことはないです。
そこに大好きなネギと
美味しいホタルイカとアオリイカ、
確信犯です。
さばの子
春は鯖の卵がとれるそうです。
新鮮な鯖の卵ですが、
クセがあるので、食べやすくひと手間もふた手間もかけているそうです。
確かに、くさみは全くなく、酒のおつまみに最高です。
何気なく美味しいとなってしまいそうですが、
鯖の卵だとは思えないスッキリした味わいです。
日本料理の深さをまた知りました。
カマス寿司
淡白な身に香ばしさが加わり、酢飯が甘さを引き立てます。
隠し味で山椒を感じたのですが、
それにもひと手間入れてあるとのこと。
とても美味しかったです。
木の芽味噌田楽
これも風味が楽しめます。
春の息吹が詰まっています。
やわらかい豆腐を見事に焼き上げています。
初夏を感じます。
* ごま豆腐
治作でこれははずせません。
治作に来たことを再確認です。
そしてこれを食べたかった。と食べると再認識します。
これこそここでなければ食べられません。
* 赤ムツの煮付け、甘鯛
赤ムツの煮付け
頭は大好物です。
付け合せのごぼうを食べながら、
骨をしゃぶります。
顔の部所のそれぞれをしゃぶります。
目も、頬も、口も、口まわりも、それに付随の皮も。
甘鯛
こちらも頭です。
こちらは塩焼きです。
こっちもしゃぶります。
二通りしゃぶり、
こんな幸せはないほど。魚の美味しさを味わい尽くしました。
* 炊き合わせ
(甘鯛、カブ、椎茸、豆腐、スナックエンドウ)
味付けは酒と塩だけ。
そのスープの美味しいこと。
野菜と甘鯛の出しの凄さです。
カブは絶妙の歯ざわり、
スナックエンドウ甘さとシャキシャキ感、
豆腐がうっすらしか出汁を吸っていない良さ、
肉厚の椎茸は出汁に協力、肉ははし休め、
甘鯛は身がほぐれて、さっきの頭とは違う身の美味しさ、
甘鯛は焼くよりも、炊くのは鮮度が命で、素材を厳選するそうです。
スープは魚と野菜が合いまるからこその味わいです。
炊き合わせであって、鍋っぽくて、お椀の上手さがある料理でした。
* そうめん
美味しい美味しいで過ごした時間の締めです。
お腹一杯ですが、これがまた入ってしまいます。
今晩のテーマである春から初夏、
ここでも味わいました。
* わらび餅
本わらび粉100%。
モチモチでわらび粉の風味と
きな粉の香ばしさと甘み。
一件地味、だけどしみじみ来る美味しさです。
絶妙な歯ごたえですが、
これは練り具合が決めます。
時間をかけて丁寧に練りますが、練りすぎてはダメです。
その按配が歯ざわり美味しさを気めます。
最後まで、業があふれるとても美味しいひと時でした。
追伸
昨日5月の「毎月お届け干し芋」出荷しました。今月は、ホシキラリ丸干し芋です。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
毎月お届けの「今月の干し芋」の直接ページはこちら
今月の干し芋
【いもたつLife】
立川談笑独演会
*粗忽の釘
*天災
中入り後に新作落語の
*ジーンズ屋ゆうこりん
三本通して、泣かせの瞬間をつくるのですが、
そこに益々磨きがかかっています。
古典落語にそのエッセンスが、
談笑師匠ならではの“外し笑い”をとりながら入るところは、
新たな感覚です。
談志師匠が亡くなって半年足らずで、
まだまだ師匠とのことは語り足りないことも窺えました。
そこを枕に、
「粗忽の釘」で、エンジンがかかっていき、
「天災」は、紅らぼうなまるとのやりとりで、
談笑らしさ全開です。
「ジーンズ屋ゆうこりん」は、
こちらを視ながら塩梅をはかっています。
もちろん面白かったです。
強弱が上手いのと、
前から思っていたのですが、
談笑師匠は、
今まであまり注目されないところを掘り下げます。
古典落語でもそうですが、
新作のオリジナルでも感じます。
機会をつくってまた行きたい落語家です。
【いもたつLife】
新東名高速を走りました
噂どおりSAとPAが混んでいました。
道は、全体に高いところを走っているので、
見通しが良い海沿いは景色がよさそうです。
(夜だったから夜景が綺麗なところもありました)
トンネルも広く、2車線でも3車線分のスペースがありました。
【いもたつLife】
帰ってきた日本
演劇「帰ってきた日本」鑑賞しました。
斬新で懐古という相反する雰囲気です。
母と子の強いつながりが題材になりながら、
日本をとりまく国際情勢を茶番のように演出していました。
難しいけれど、ゾクゾクくる感じです。
舞台は昭和30年代、40年前半くらいをイメージさせます。
仕草は、それよりももっとさかのぼります。
江戸時代くらいまでか。
そこで、番場の忠太郎
それと、懐古な日本人気質が芝居されます。
しかもかなりオーバーに。
舞台セットは壊れた日本で、繰り広げられる劇も過去の日本に似た感じです。
それは未来の日本を現し、
過去に似ていて、でも違うのではないか、という表現です。
そして、未来の日本が壊れていくまでを予言したような内容です。
ここまでが第一部。
第二部は、同じ雰囲気のまま、ユーモアときつい風刺の中で進みます。
それは日本が国際社会の中でやっていることを茶番劇としています。
演劇後に、この演劇の監督、鈴木忠志さんと、
劇団SPACの宮城聰さんの対談でわかったのですが、
これは、原作の戯曲の人物をそのままに、
日本やアジア各国とアメリカにすりかえただけとのこと。
でもまさに日本を取り巻く現在までの情勢そのものになるから、
不思議です。
「帰ってきた日本」という題名からは、様々なことが推察されます。
今が危うい。それは誰もが感じることで、
だからといって単純に過去の日本を肯定するとはいきません。
「帰ってきた日本」は可能性は今よりもあるけれど、
“それだけではつぶれる”そういう強い風刺の劇のように感じました。
劇冒頭は、母と子のやりとりが繰り返し続きます。
母にも子にも、それは生きる源で、
それを確認しよう。という言葉はありきたりですが、
やっぱりそこを押さえることが、
閉塞な日本で個人が粋に生きるコツだというメッセージに聞こえました。
【いもたつLife】
柳家花緑独演会
現役落語家の中で、トップクラスで、
私としてはかなり好きな、そして実力ある落語家だと思っている
花緑師匠の独演会です。
前座の柳家フラワーさんの「元犬」師匠が「火焔太鼓」
中入り後、見事な大神楽があり、締めは師匠の「試し酒」。
満喫しました。
「元犬」は初めて観たネタでした。
昨秋も花緑師匠の「火焔太鼓」は観ているのですが、
そこからの練り上げを感じます。
志ん生師匠を元に、相変わらずのスピード感が売りです。
大神楽は見事の一言です。
なかなか目のあたりに出来ない貴重な芸とのこと。
27歳で芸歴24年というこれから、
この世界を背負って行く、柳貴家雪之介さんの将来も楽しみになる芸でした。
締めの「試し酒」は、音でしか聞いたことがないネタで、
ライブは初めてです。
こういうネタは、ライブでこそ価値があります。
私が酒呑みということもあり、
苦笑いながらの大笑いでした。
花緑師匠流石のひとときでした。
【いもたつLife】
本物のフィアンセ(グリム童話) spac 演出 宮城總
幸運にもチケットをもらうことができて、二度目の鑑賞です。
今回は演劇後に、宮城總さんとゲストの作曲家の方との
対談のおまけ付きでした。
流れがわかっているので、もっと細部までみえてくるものが
あるかなと臨んだのですが、
まだまだ本筋を捉えきれないことを感じました。
演劇では、ワンシーンの演技が象徴です。
そこには、様々な意味が込められています。
舞台と演者と音楽の非常に限られた中で。
でも仕草や動きとスピードと、
演者間の間やつなぎ、そして音楽、
そこに伝える術を盛り込んでいるのが演劇です。
映画とは目に飛び込んでくる情報量が圧倒的に違います。
だから観る側に求めるハードルが高いことが、
ここのところspacの演劇をみてきてやっとわかったというのが、
今回の印象です。
内容は、
ごくごく普通に生活する庶民へのエールです。
今生きている自分は歴史に名を残すこともなく、
世界になにかをもたらす存在ではありません。
けれど、世の中は私のためにあります。
そして私も世界のための存在です。
また真実とは何でどこにあるのかを提起します。
それを仏教の無常や
(トークでも言っていたのですが)
他の宗教観絡めて、
言い放つではなくて、
「そうは思わない?」
と投げかけてきます。
深いです。
【いもたつLife】