いもたつLife
故郷 1972 日 山田洋二
人々の日常を変えてしまうことは、歴史上何度もありました。
戦争や明治維新、それ以前の歴史上の出来事でも。
同じく、産業革命から起こった経済支配の波は、表面的な争いはない現代まで、
人々の生活を変えています。
日本の高度成長の時、田舎の島でもそれがあり、
それをこの映画は表現しています。
多くの人が豊かさを選んだことが、本当に豊かかどうか、
今から振り返れば「ああだ、こうだ」と言えますが、
当時はそんなことは考えません。
それよりも今この映画でわかることは、
大きな流れに自分が身をおいているかどうか。
「これまでの、これから」生きてゆく上で
そこに注目しているのが大事ということです。
先住民の方が幸せだと思うことがあります。
外からの大きな力に惑わされずに生きる環境にいるからです。
私たちは環境が変化する場所で生きています。
だけど環境の変化を実感することは中々できません。
良い時代になったものです。
映画は過去の環境を客観的に映してくれます。
(客観的かは造り手の意志次第ですが)
なんて心強いのでしょう。
内容とは関係ないですが、
この映画を観た感想です。
【いもたつLife】
ヒトはイヌとハエにきけ Jアレンブーン著 上野圭一訳
イヌともハエとも意思に疎通ができることと、
その素晴らしさが書かれています。
精神論的な善きことを思うに通じるような感じです。
動物とコミュニケーションができるようになる前に、
自分と身近な家族や会社でのヒトとのコミュニケーションを、
読みながら考えます。
それは言葉があることに胡坐をかいている様が浮かびます。
便利な言葉をもっと丁寧に使うだけで、
もっと良いコミュニケーションができるのに。
何故胡坐をかくかといえば、
この本の主題に胡坐を書いているからでしょう。
【いもたつLife】
醜聞 1950 日 黒澤明
「星が生まれるのを見たんだ」
「その感激に比べれば勝利なんて・・・」
志村喬が演じる、ウジ虫弁護士が晩年“人間”になる物語です。
その根底の人間の性が、うまく描かれています。
変わろう変わろうと言って変われない人たち、
みんなそろって「明日こそは」「来年こそは」と言います。
変われなくてウジウジする奴らと、それを利用する輩たち。
それらとは対照的な理想を貫く主人公の三船敏郎、
聖女のようなウジ虫の娘。
変わりたいというのは、その場所に自分を置いています。
私も“今”から抜け出したい心があります。
それはいつも誰も持つでしょう。
それよりも今どこに自分がいるか知る。
それが大事です。それがわかればいたくない場所にはいません。
予断ですが、
聖女のような娘は、フェリーニの「崖」に登場した、
詐欺師が改心するきっかけになった、聖女のような娘と重なりました。
【いもたつLife】
動的平衡 福岡伸一
とてつもない時間が今の自然=人を含めた地球の状態が、
できた。
と子供心に感じたことがあります。
「人の行いも良いも悪いもない」
その積み重ねが今の状態で、
落ち着きどころに落ち着いている、
大きく見れば。
この想いは今も同じで、環境問題で困っているのも、
人が今より行きづらくなるからだけで。
だからといって、自分の日々の生きる日々は、
とても個人的なことに左右されていますが。
そんな感覚を持ちながら読みました。
生命は奇跡なんかじゃなくて、
落ち着いた状態なのですが、
やっぱり奇跡な面があります。
矛盾することを言っていますが、
そもそも人間(私)ごときの考えでは、
何も理解も説明もできるわけがありません。
人の立ち位置=未熟だけれど、
追求せずにはいられない。
この本で紹介されている「生きること」の定義は、
「人が追うもの」と同じだと思いました。
【いもたつLife】
ノッティングヒルの恋人 1999 米 ロジャー・ミッシェル
大女優とごく普通の男の恋です。
男の周りにいる妹や友人たちが、彼に親身なところが、
彼の魅力を醸しているのですが、
様々な人たちが集まっています。
怪しい男もいるし、同性愛者みたいな人も、やたら強い車椅子の女性、
自信満々な素人料理人、美人じゃないけど可愛い妹 など。
彼らは、男が頼る時だけ親身なんですね。
イギリスの田舎の良い雰囲気が楽しめます。
それを感じるのは、
自分にはこういう人たちと一緒にいる生き方をしてこなかったからかも。
ごくごく普通、裕福でもないけど、こんな生き方って幸せです。
だから、大女優と結婚することになっての、
男のこの後が心配なのですが、
それは、余計なおせっかいというのが、映画の流れでした。
【いもたつLife】
つぐみ 1990日 市川準
薄命の主人公はわがままに育ち、悪態をつく美少女に成長しました。
その悪態が許せないほど。というところからスタートします。
最初は強度の人格障害者くらいの描かれ方です。
それがだんだん許せるかもしれない、悪態ぶりに描かれます。
その変化がみていて心を和めてくれます。
主人公が変わるきっかけは、恋人と飼っていた犬ですが、
変わりたい時期だった。が本当のところです。
最初と最後では、一見同じいたずらも、違う本心があります。
それを受けるもう一人の主人公の友人も、同じく変化(成長)しています。
絶望で生まれたというイレギュラー以外は、
凡々とした日々にドラマを少し交えています。
包み隠すような成長物語なのかな?と感じました。
【いもたつLife】
会議は踊る 1931独 エリック・シャレル
水戸黄門的な演出は心地よく、ゆったりした流れの中に
ひたることができます。
トーキー初期の「巴里の屋根の下」ではシャンソンと、
トーキーの手法の先進さで、フランス映画の良さを感じたのと同じように、
ドイツ映画のトーキー初期のこの映画は、ミュージカルを思わせる楽しさと、
垣間見る硬派なストーリーにレベルの高さを感じました。
ウィーン会議の世界観がもっとわかっていれば
もっとわかることがあったでしょう。
大陸ヨーロッパと島国日本の根っからの気質の違いや、
島国イギリスは孤高の条件があったこと。
ギリシャ、イタリアも当然ヨーロッパの主役ですし、
足をのばせばエジプトがキーで、
大航海時代の主役のスペイン、ポルトガルもまだ幅を利かせていた時代です。
知識不足を嘆くのをおいておいて、
日本ではわからない気持ちを映画からもっと汲みたいし、
日本のよさもわかりたい。
それを後押ししてくれる楽しさがこの映画にはありました。
【いもたつLife】
スティング 1973米 ジョージ・ロイ・ヒル
普段から、頭なんて良くない。と言っていながら、
知的な詐欺をみせられると、頭を回して探ります。
そして、物語について行っているかを心配し、
知的な詐欺ができるかシュミレーションしたくなります。
とても良くできていて、結局注意深くみていても騙される結果になりましたが、
楽しめました。
どれだけ格好良くやるか、スマートにやり遂げるか。
という表向きだけでなく、真剣なシーンがあり、脚本もシリアスを逃さない、
から上手くはまり、楽しめました。
できそうでできない脚本とシーンが続きました。
狙った獲物を騙すために大掛かりで仕掛け、
獲物が去ると、「お疲れ様」騒ぎは、痛快です。
良い仕事を段取りするお手本のようでした。
【いもたつLife】
カサノバ 1976伊 フェデリコ・フェリーニ
舞台劇を映画観ているような感じです。
音楽、衣装、メイク、小道具などが合っいるんですね。
限られた箱の中で熱い舞台が演じられているようでした
ストーリーや、表現したいことは、心に響くかどうか。
映画として好き嫌いが分かれそうです。
表現がまじめそうで、意図してずらしているので、
しっくり来ないというのが個人的な感想です。
(人の内面をえぐっている。ように映りました)
(その真意が汲みとれていないのか、言葉にできません)
白々しく女にモテル男にカサノバがみえました。
けれど、あまりにも女を真剣に愛する様に、
超人的な人間性がみえます。
女にモテタイけれど、なかなか。
というのが、多くの男の実態でしょう。
人(男?)は過度を求めがちですが、
それは過ちで、ほんのちょっと欲望がかなえば、
それが最高なんだ。ということをしみじみと感じた映画でした。
【いもたつLife】
サボタージュ 1936英 アルフレッド・ヒッチコック
少年=妻の弟の一件が、ヒッチコックらしくない!
という物議がある作品です。
子供はおいておいて、工作員の夫=主人公と、妻=こっちが主人公?
のラストの心理がヒッチコックらしく楽しめました。
妻が夫を殺害したのは、故意か、偶然が後押しをした故意か、
夫が殺されることをある程度望んだのか。
この考察が面白いです。
妻は殺害の後も弟の幻影をみます。
恋人役の警官に引き止められても、自首を強行します。
殺害直後のカナリヤの鳴き声も気になります。
妻は夫との生活自体から逃れたい意識がずっとあった、
それが殺意につながっていたような気がします。
私が望む解釈ですが。
みかけは、妻の罪が表でないハッピーエンドですが、
妻は殺意があった以上救われません。
このあたりは、他のヒッチコック作品と異なる展開でした。
【いもたつLife】