いもたつLife
ヴェニスの商人 2004米/英/ルクセンブルク/伊 マイケル・ラドフォード

虐げられているユダヤ人側の言い分も、
虐げているキリスト教徒側の言い分も、
不足が無い立ち位置にいるから、冷静に見ることができます。
連綿と続く、ユダヤ人迫害が、シェークスピアでもこんなに描かれていることに、
その深さを改めて感じます。
(日本にいることで、こういうことがわからないことを何度感じたことでしょう)
物語が、古典として評価できることがこの映画からも分かります。
この映画も、それに応えていると思います。
舞台では出せない、映像を具現化できる良さが活かされていました。
【いもたつLife】
リラの門 1957仏 ルネ・クレール

ろくでなしのジュジュと芸術家が、身勝手な殺人犯をかくまいます。
途中から、ろくでなしが恋しているマリアと殺人犯が・・・。
ジュジュは、ろくでなしを自覚しています。
だから、そこから抜け出したくて。
殺人犯をかくまうのは、スタートに立てたのだと思ったのでしょう。
親友の芸術家をなんとか説得して、
殺人犯に献身します。
最後は許されないことをした殺人犯を葬り
日常に戻ります。
ジュジュは、前と同じろくでなしのままかどうかは分かりません。
ジュジュは、後悔しています。
だけど一世一代で守ったものがあります。
きっとジュジュは変わらないでしょう。
芸術家も。
マリアも忘れるでしょう。
人間なんてそんなものです。
だけど、熱く生きたことは財産です。
自分が生きている事を承認してくれるルネ・クレールらしい映画でした。
【いもたつLife】
U―571 2000米 ジョナサン・モストウ

潜水艦の環境は劣悪なので、その条件で、緊張感が高まります。
戦時は、敵味方双方が最高を越えるべく技術を注ぎ込みます。
そこをスパイするという任務は、お互いが最も警戒るすることなので、
展開の行方に注目です。
ほとんど絶対、味方=主人公たちが(“いいもん”と昔言った)
助かることが約束されている進行に、興ざめを感じるものの、
戦争だけでなく、心技体の心が未熟で、艦長になれない副官が、
この船(潜水艦)の任務中に、立派に艦長をもしのぐ人物に、
成長物語としているところが見どころです。
結果オーライの脚本は過ぎていますが、
非常な人格を手に入れる、それを操れるようになる副官の心は、
経営の真を語っていて、私の心を刺激する流れでした。
【いもたつLife】
故郷 1972 日 山田洋二

人々の日常を変えてしまうことは、歴史上何度もありました。
戦争や明治維新、それ以前の歴史上の出来事でも。
同じく、産業革命から起こった経済支配の波は、表面的な争いはない現代まで、
人々の生活を変えています。
日本の高度成長の時、田舎の島でもそれがあり、
それをこの映画は表現しています。
多くの人が豊かさを選んだことが、本当に豊かかどうか、
今から振り返れば「ああだ、こうだ」と言えますが、
当時はそんなことは考えません。
それよりも今この映画でわかることは、
大きな流れに自分が身をおいているかどうか。
「これまでの、これから」生きてゆく上で
そこに注目しているのが大事ということです。
先住民の方が幸せだと思うことがあります。
外からの大きな力に惑わされずに生きる環境にいるからです。
私たちは環境が変化する場所で生きています。
だけど環境の変化を実感することは中々できません。
良い時代になったものです。
映画は過去の環境を客観的に映してくれます。
(客観的かは造り手の意志次第ですが)
なんて心強いのでしょう。
内容とは関係ないですが、
この映画を観た感想です。
【いもたつLife】
ヒトはイヌとハエにきけ Jアレンブーン著 上野圭一訳

イヌともハエとも意思に疎通ができることと、
その素晴らしさが書かれています。
精神論的な善きことを思うに通じるような感じです。
動物とコミュニケーションができるようになる前に、
自分と身近な家族や会社でのヒトとのコミュニケーションを、
読みながら考えます。
それは言葉があることに胡坐をかいている様が浮かびます。
便利な言葉をもっと丁寧に使うだけで、
もっと良いコミュニケーションができるのに。
何故胡坐をかくかといえば、
この本の主題に胡坐を書いているからでしょう。
【いもたつLife】
醜聞 1950 日 黒澤明

「星が生まれるのを見たんだ」
「その感激に比べれば勝利なんて・・・」
志村喬が演じる、ウジ虫弁護士が晩年“人間”になる物語です。
その根底の人間の性が、うまく描かれています。
変わろう変わろうと言って変われない人たち、
みんなそろって「明日こそは」「来年こそは」と言います。
変われなくてウジウジする奴らと、それを利用する輩たち。
それらとは対照的な理想を貫く主人公の三船敏郎、
聖女のようなウジ虫の娘。
変わりたいというのは、その場所に自分を置いています。
私も“今”から抜け出したい心があります。
それはいつも誰も持つでしょう。
それよりも今どこに自分がいるか知る。
それが大事です。それがわかればいたくない場所にはいません。
予断ですが、
聖女のような娘は、フェリーニの「崖」に登場した、
詐欺師が改心するきっかけになった、聖女のような娘と重なりました。
【いもたつLife】
動的平衡 福岡伸一

とてつもない時間が今の自然=人を含めた地球の状態が、
できた。
と子供心に感じたことがあります。
「人の行いも良いも悪いもない」
その積み重ねが今の状態で、
落ち着きどころに落ち着いている、
大きく見れば。
この想いは今も同じで、環境問題で困っているのも、
人が今より行きづらくなるからだけで。
だからといって、自分の日々の生きる日々は、
とても個人的なことに左右されていますが。
そんな感覚を持ちながら読みました。
生命は奇跡なんかじゃなくて、
落ち着いた状態なのですが、
やっぱり奇跡な面があります。
矛盾することを言っていますが、
そもそも人間(私)ごときの考えでは、
何も理解も説明もできるわけがありません。
人の立ち位置=未熟だけれど、
追求せずにはいられない。
この本で紹介されている「生きること」の定義は、
「人が追うもの」と同じだと思いました。
【いもたつLife】
ノッティングヒルの恋人 1999 米 ロジャー・ミッシェル

大女優とごく普通の男の恋です。
男の周りにいる妹や友人たちが、彼に親身なところが、
彼の魅力を醸しているのですが、
様々な人たちが集まっています。
怪しい男もいるし、同性愛者みたいな人も、やたら強い車椅子の女性、
自信満々な素人料理人、美人じゃないけど可愛い妹 など。
彼らは、男が頼る時だけ親身なんですね。
イギリスの田舎の良い雰囲気が楽しめます。
それを感じるのは、
自分にはこういう人たちと一緒にいる生き方をしてこなかったからかも。
ごくごく普通、裕福でもないけど、こんな生き方って幸せです。
だから、大女優と結婚することになっての、
男のこの後が心配なのですが、
それは、余計なおせっかいというのが、映画の流れでした。
【いもたつLife】
つぐみ 1990日 市川準

薄命の主人公はわがままに育ち、悪態をつく美少女に成長しました。
その悪態が許せないほど。というところからスタートします。
最初は強度の人格障害者くらいの描かれ方です。
それがだんだん許せるかもしれない、悪態ぶりに描かれます。
その変化がみていて心を和めてくれます。
主人公が変わるきっかけは、恋人と飼っていた犬ですが、
変わりたい時期だった。が本当のところです。
最初と最後では、一見同じいたずらも、違う本心があります。
それを受けるもう一人の主人公の友人も、同じく変化(成長)しています。
絶望で生まれたというイレギュラー以外は、
凡々とした日々にドラマを少し交えています。
包み隠すような成長物語なのかな?と感じました。
【いもたつLife】
会議は踊る 1931独 エリック・シャレル

水戸黄門的な演出は心地よく、ゆったりした流れの中に
ひたることができます。
トーキー初期の「巴里の屋根の下」ではシャンソンと、
トーキーの手法の先進さで、フランス映画の良さを感じたのと同じように、
ドイツ映画のトーキー初期のこの映画は、ミュージカルを思わせる楽しさと、
垣間見る硬派なストーリーにレベルの高さを感じました。
ウィーン会議の世界観がもっとわかっていれば
もっとわかることがあったでしょう。
大陸ヨーロッパと島国日本の根っからの気質の違いや、
島国イギリスは孤高の条件があったこと。
ギリシャ、イタリアも当然ヨーロッパの主役ですし、
足をのばせばエジプトがキーで、
大航海時代の主役のスペイン、ポルトガルもまだ幅を利かせていた時代です。
知識不足を嘆くのをおいておいて、
日本ではわからない気持ちを映画からもっと汲みたいし、
日本のよさもわかりたい。
それを後押ししてくれる楽しさがこの映画にはありました。
【いもたつLife】