いもたつLife
戦争は終わった 1965仏/瑞典 アラン・レネ
ひとつのシーンを説明することなく、その映像が持っている力で語る。
速いカットをつなぎ、ここも、映像が連続することで意味を増幅させる。
ヌーベルバーグの夜明け前を感じさせる作品です。
ただし、それは、手法に限って。
だけど、とても印象深い映像の見せ方でした。
ストーリーは、第二次大戦の影響と価値観と未来への挑戦に、
人生をかけている、とても純真な心をもった主人公と、
それにまつわる人達の話です。
時代の流れに向かうことへのエネルギーがあったのでしょう。
当時の姿がうかがえます。
歴史なんて、過ぎてしまえばあたりまえです。
しかし、当事者は自分の全精力を尽くして、時には、
時の流れに逆らいます。
それは、今行われているいくつかもそうでしょう。
アクションとしてはほとんど見せ場を作ることなく、
映像を進めてゆきます。
観るものにゆだねるのと、
自己が持つイメージで増幅させて受け取って欲しい、
という造り手の声が聞こえてきそうです。
【いもたつLife】
エスピオナージ 1973仏 アンリ・ヴェルヌイユ
ソ連のスパイが主人公で、米・仏・英・西独と展開が広がる、
東西冷戦を象徴している映画です。
スパイ活動をアクションで披露するのではなく、
その立場で何をしていたかを語ります。
国と冷戦と個人(家族は身内がスパイとは知らない)
そして、使命、忠誠心。
だけど持っている価値観での裏切りが起こります。
(裏切りとは一側面)裏切りかどうかはその人の価値観で、
まっとうしている姿でもあります。
当時の世情がわかります。欧米が描かれているので、
日本のことが気になります。
安保闘争の時代でもありますから。
この頃を遠くで察するか察しないかの年齢で、私は育ちました。
冷戦のひとつの結果がこの映画です。
これを観ると第二次大戦では解決しなかった続きが感じられます。
そして、冷戦後は地域紛争へと流れます。
平和な日本では感じえないことを感じさせてくれる映画は貴重で、
こういうものから少しでも、教育では封印されきたことに
接していたいと思いました。
【いもたつLife】
百姓の力 渡辺尚志
江戸時代を知る時、そのほとんどを「江戸の町」から追ってしまいがちです。
また、徳川家を頂点とした上から目線で追います。
政治面からも経済面からもその目線です。
この本は、村と百姓目線から江戸を語ってくれています。
江戸好きな私にとって、わかっているようでおぼろげだったことが、
頷きとともに明るくなります。
そこには日本の隅々まで、人々の知恵で整備された江戸時代の姿が浮かびます。
小さな単位まで上手く機能されていたからこそ、
評価できる江戸時代だったことがわかります。
自然と調和し、領主とも他の村とも調和し、村内の個々人も活かす、
江戸の村の成熟された匠さを知ることができました。
【いもたつLife】
20世紀少年 最終章
ケンヂを中心とした周りの人たちの心の問題が、
最終章では語られていました。
浦沢さんはそれを狙ったのかはわかりませんが、
タイムリーな話だし、
人の心の扱いが今までとは違う問われ方をして
世紀末を迎えたのが20世紀。
として未来からみられるかもしれません。
だから、ともだちこそが「20世紀少年」なのかもしれません。
ともだちとカンナは対照的に育ちました。
周囲がつらかった ともだち、
周囲に恵まれた カンナ、
だけど心の深いところでは同じように傷ついていました。
この二人を主に据えながら、
各登場人物の、生い立ちと子供の頃の心が、
大人になってどう表出するかが随所に描かれています。
最初は興味津々のお気楽で、ミステリアスで、
私の世代には懐かしいSF=表の20世紀でした。
そこから、精神的なSF=裏の20世紀になりました。
どっちが面白かったのか?
二面性も今の世相かもしれません。
【いもたつLife】
20世紀少年 第2章
一作目と代わりシリアスな展開です。
隋所に懐かしさと、役のそっくりが潤いを与えていますが。
この物語は、どこにでもいるただのガキが大人になって、
でも、どえらい事をしでかす奴がいて、
それを止める奴、こっちこそ正義感なんてなく、
自分がもしかしたら原因じゃないかって、
それに引き込まれた結果です。
だからケンジはかっこよくないのですが、
だから共感できます。
そこから物語を続けるには、普通を超える必要があって・・・。
でも(原)作者は読者(鑑賞者)の期待に応えるのは真摯な行動です。
こんなこと考えながらみるのは邪道と、家族にまた言われそうです。
でも次がすぐにみたくなりました。
劇場公開直前にみて、よかったと思っています。
【いもたつLife】
州崎パラダイス赤信号 1956日 川島雄三
くされ縁のカップルは、自分たちのことだけで必死です。
二人を愛したり、親身になってくれる人の気持ちは解らないのでしょう。
結局経済的に破綻するのですが、実はとても幸せにみえてしまいます。
川島監督は、軽快なタッチで結構深刻な話を進めてゆきます。
二人の主人公とそれにまつわる、エピソードが入り、
(おかみさんの旦那が帰ってきてすぐに悲劇になること)
(田舎での清楚な娘の悲劇)
周りの方が深刻そのままに進みます。
当の本人たちは、すれ違いながら元のさやに納まるのですが。
当人たちが一番変わらなければならないのに変わりません。
ここが監督の意図だと私は感じました。
二人は、流した汗からみれば少し不幸な路線を走っているように
思えてなりません。が、
人生の中で、深く掘りさげる必要があるときから逃げているようです。
その時の嫌な感覚は、嫌なだけにそこに行く勇気が必要です。
だけど逃げるから嫌な感覚が増幅してゆきます。
子供の時に、先生のいいなりになっていたこと、闇雲に順序を経てゆくこと、
がありました。
すべてではありませんが、あれも教育として意味があることと今気づきます。
【いもたつLife】
夜の女たち 1948日 溝口健二
戦後間もない時代が作った女たちを、
娼婦としてしか生きてゆけない女たちを、
ほこりまみれで見せてくれます。
自分が望んだ娼婦でもあるのですが、
男と社会の犠牲者です。
救いがあるのかが、ずっと焦点として作品に入り込みました。
自分から抜け出すしか救いはないのですが、
抜け出せる境遇ならそもそもこの世界には入らないし、
長く居ることで、抜けられなくなるのは、いつも同じ、他のことでも同じです。
主演の田中絹代は、娼婦になる前と後ではまさしく別人でした。
ただ、娼婦の中に自分だけが犠牲になればよいというメッセージを匂わせていて、
それは、夫、子供、嫁ぎ先、勤め先で尽くしていた姿と重なります。
どこまで行っても救われないから、どうなっても良い身だけれど、
変われないものがある女の根本を感じました。
【いもたつLife】
アントキノイノチ さだまさし
心が壊れても外傷はないから、他人にはわかりません。
ひどくなるまで、自覚症状もない場合が多いかも。
自分がわからないのだから、他の人にはもっとわかりません。
人の心を蝕む狩人にターゲットにされた主人公二人と他のメンバー
(SFになっても良い位、この狩人はエイリアンと同じです)
主人公二人は、
人が死ぬ生々しい場面を日常とします。
それを通して人の心の繊細さや強さや
生きるための本能とは何かが描かれます。
心が壊れた人達が加速しながらふえている社会です。
その原因のひとつは、ささいなことを喜ぶことができない感覚が
ついてしまったことなのではないか?
二人は心が壊れるという自分で治すしかないけど、
できるかどうかわからない。その苦しみから這い上がりました。
小さな喜びを喜ぶことができる人になって。
そういう心を育ててゆきたいですね。
【いもたつLife】
牛久の大仏
予想よりよっぽど大きく立派でした。
常磐道つくばJCから圏央道と
高速を乗り継いで見たのですが、
周りは畑ばかり。
一般道でも不自由はなさそうですが、
高速があればやっぱり便利です。
この大仏も高速がなければみなかったでしょうから。
これだけ高速道が発達すると未来都市です。
そして、日本の地方と地方の
時間と距離の壁がなくなります。
今回も痛感しました。
【いもたつLife】
誘惑されて棄てられて 1963伊 ピエトロ・ジェルミ
家の名誉を守ることが至上命題になっている頑固親父が
ストーリーを引っ張ります。
(シチリア島の常識が背景にあることを鑑賞後に知りましたが)
家族のための名誉であって、家族を守ることと名誉を守ることが
すり替わってしまいます。これは陥りやすい罠ですが、
親父はそれを強烈に推し進めます。
事の発端は、長女の婚約者が、妹(アネーゼ)を誘惑したことが始まりです。
争いは争いを呼びます。
親父は何でもありで進めます。
回りも幻惑と親父の強引な振る舞いに麻痺してゆくかのように、
行動を共にします。
その中で唯一正気なのがアネーゼです。
普通の感情を持ち続けていました。
しかし、それはマイノリテティで、
狂気のようにお膳立てをする親父はもちろん、
それに踊らされていた周りの家族や関係者からは白い目です。
名誉を守る姿勢が本来を逸してしまった例で、
シチリア島での常識を客観的に写すこと。
と、アネーゼが持つ心=社会的な正義とは違う、
人が求める心を私に響かせてくれました。
余談ですが、劇中に、歌としてナレーションしたのは、
1961年木下恵介の「永遠の人」の手法と似ているのに驚きました。
また、「わらの男」でのピエトロ・ジェルミ監督は、小津映画を思わせましたが、
この作品では、小津監督以降の日本映画の匂いを感じました。
【いもたつLife】