いもたつLife
夜の女たち 1948日 溝口健二

戦後間もない時代が作った女たちを、
娼婦としてしか生きてゆけない女たちを、
ほこりまみれで見せてくれます。
自分が望んだ娼婦でもあるのですが、
男と社会の犠牲者です。
救いがあるのかが、ずっと焦点として作品に入り込みました。
自分から抜け出すしか救いはないのですが、
抜け出せる境遇ならそもそもこの世界には入らないし、
長く居ることで、抜けられなくなるのは、いつも同じ、他のことでも同じです。
主演の田中絹代は、娼婦になる前と後ではまさしく別人でした。
ただ、娼婦の中に自分だけが犠牲になればよいというメッセージを匂わせていて、
それは、夫、子供、嫁ぎ先、勤め先で尽くしていた姿と重なります。
どこまで行っても救われないから、どうなっても良い身だけれど、
変われないものがある女の根本を感じました。
【いもたつLife】
アントキノイノチ さだまさし

心が壊れても外傷はないから、他人にはわかりません。
ひどくなるまで、自覚症状もない場合が多いかも。
自分がわからないのだから、他の人にはもっとわかりません。
人の心を蝕む狩人にターゲットにされた主人公二人と他のメンバー
(SFになっても良い位、この狩人はエイリアンと同じです)
主人公二人は、
人が死ぬ生々しい場面を日常とします。
それを通して人の心の繊細さや強さや
生きるための本能とは何かが描かれます。
心が壊れた人達が加速しながらふえている社会です。
その原因のひとつは、ささいなことを喜ぶことができない感覚が
ついてしまったことなのではないか?
二人は心が壊れるという自分で治すしかないけど、
できるかどうかわからない。その苦しみから這い上がりました。
小さな喜びを喜ぶことができる人になって。
そういう心を育ててゆきたいですね。
【いもたつLife】
牛久の大仏

予想よりよっぽど大きく立派でした。
常磐道つくばJCから圏央道と
高速を乗り継いで見たのですが、
周りは畑ばかり。
一般道でも不自由はなさそうですが、
高速があればやっぱり便利です。
この大仏も高速がなければみなかったでしょうから。
これだけ高速道が発達すると未来都市です。
そして、日本の地方と地方の
時間と距離の壁がなくなります。
今回も痛感しました。
【いもたつLife】
誘惑されて棄てられて 1963伊 ピエトロ・ジェルミ

家の名誉を守ることが至上命題になっている頑固親父が
ストーリーを引っ張ります。
(シチリア島の常識が背景にあることを鑑賞後に知りましたが)
家族のための名誉であって、家族を守ることと名誉を守ることが
すり替わってしまいます。これは陥りやすい罠ですが、
親父はそれを強烈に推し進めます。
事の発端は、長女の婚約者が、妹(アネーゼ)を誘惑したことが始まりです。
争いは争いを呼びます。
親父は何でもありで進めます。
回りも幻惑と親父の強引な振る舞いに麻痺してゆくかのように、
行動を共にします。
その中で唯一正気なのがアネーゼです。
普通の感情を持ち続けていました。
しかし、それはマイノリテティで、
狂気のようにお膳立てをする親父はもちろん、
それに踊らされていた周りの家族や関係者からは白い目です。
名誉を守る姿勢が本来を逸してしまった例で、
シチリア島での常識を客観的に写すこと。
と、アネーゼが持つ心=社会的な正義とは違う、
人が求める心を私に響かせてくれました。
余談ですが、劇中に、歌としてナレーションしたのは、
1961年木下恵介の「永遠の人」の手法と似ているのに驚きました。
また、「わらの男」でのピエトロ・ジェルミ監督は、小津映画を思わせましたが、
この作品では、小津監督以降の日本映画の匂いを感じました。
【いもたつLife】
父と暮らせば 2004日 黒木和雄

日本が貧しかった記憶がまだある世代の私でも、
戦争を知らない。
ヒロシマとナガサキの悲劇がどこまでわかるかの自信はないけれど、
下の世代や日本人以外では、もっとわからないのではないでしょうか。
だから色々な描写をしてくれるし、必要なのだと思う。
父娘の会話からだけで、戦争が日常であったことが伝わってくる、
時を刻むごとに切なくなります。
日本の8月には特有の感覚があります。
それは今の若い世代にも受け継がれているのでしょうか。
映画の本質とは別になるので、おこがましいかもしれませんが、
セットを本物志向すれば、
受け手がもっと創造的になる作品になったように思いました。
【いもたつLife】
愛のお荷物 1955日 川島雄三

現代の少子化とは真反対の、人口抑制が大問題という、
大まじめな国会論議から入り、
議案の張本人の厚生大臣一家で、次々と妊娠が発覚、
さあどうなるのか?
というコメディです。
軽すぎず、風刺が効いていて、面白い映画です。
配役もピッタリです。
ラストには追い討ちを掛けるエピソードが入り洒落てもいます。
淡々とはさせず、大仰でもなく、茶化したシーンもあれば、痛烈さもある。
展開が速くてリズムもあり、よくできていると思いました。
【いもたつLife】
坂の上の花火

静岡の市街地から20km以上山の中に入っていった、
坂の上の花火です。
音も光も花火以外は、会話と星だけ、山を背に真正面に上がる花火は、
自分のためだけに上げてくれているようでした。
淡々と、ときおり華やかなに。
ここ何年も花火を見
に遠出をしたことがありませんでした。
雑踏に行くことをためらって。
また、「花火だぞ!見ろ!」と迫られているのがちょっと引っかかって。
山の中に消えてゆく音、
消えてゆく花火のかけらはバックの星と溶け込みます。
とても良い花火でした。来年も行こう!
【いもたつLife】
復讐するは我にあり 1979日 今村昌平

殺人シーンが目を覆いたくなります。
観ている者に実際の感覚を植えつけるかのようです。
そして、なんの脈絡もなく複数殺人を行う犯人の、
異常な恐さと普段の様も、どこまでが真実かはさておき、
不気味なほどに、この人物が実在したことを感じさせます。
1、こんな男=殺人者であっても、それに同調する女や、
同じ匂いがある女の母が現れること。
2、その時々の心のありようで同じ人間でも違う人格があること。
3、それが、たとえ多重人格者でなくても、普通の人間でもその可能性があること。
が伝わります。
次の焦点は男の動機です。
親子の相克からという面も語られます。それもあるでしょう。
男の父親も一筋縄ではないようです。
悪く言えば偽善者ですが、
訥々と生きてきた単なる男であることに違いなく、悲劇に遭遇している立場です。
(ただ、父と子でしかわからないこともあったはずです)
結局は犯人の異常さ非情さがやはり頭から離れません。
だけど、この男のそばでずっと係わった、
父、母、嫁の無念さと憤りと怒りとそれらの感情のぶつけどころがない様。
それを背負った人生が、死刑で終わったラストには、
時は流れていることへの感慨がありました。
【いもたつLife】
気まま時代 1938米 パンドロ・S・ハーマン

この時期にこの頃のアメリカ映画をみると、
あれは無謀な戦争だったことをよく思います。
アメリカは、あまりにも豊かです。
映画の感想です。
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの映画はうわさ以上に素敵でした。
連作されている作品すべてを見たくなるほどです。
息がピッタリもさることながら、レベルの高さに感動ものです。
二人のダンスシーンは、断片で過去見たことがあるのですが、
すごいとわかってみて、すごいからプロです。
それに素敵!なのです。
ストーリーは他愛ないのですが、その方が良いくらいに思えます。
だけど、ジンジャー・ロジャースが、2度の催眠にかかるのですが、
違う催眠で違う表現と表情に、演者を見ます。
それを含めた、裏方の良い仕事ぶりも感じました。
【いもたつLife】
地震

今この記事が書けることはありがたいです。
被害にあった方、大丈夫でしょうか。
お見舞い申し上げます。
静岡から茨城へクルマで移動の予定でした。
丁度外に出ようとした時でした。
どこにいようかと迷いながらも窓を開け、
柱に寄りかかっていました。
テーブルの上の猫が2匹驚いて、廊下へ。
とても長い10秒でした。
揺れが収まると家族の無事を確認しに、2階へ、
すべての本棚が見事に倒れていました。
他には、
食器がいくつか割れる。
ビールが割れる。
そこ等じゅうがちらかる。
等々。
この程度の被害でよかったと家族で確認。
会社も心配になってやってきましたが、
冷蔵ケースの菊姫がこの程度のちらかりで
後は問題なし。
「ほっと」しています。
本当に突然でした。
冷静でしたが、どこまで揺れが大きくなるのか?
とても怖かったです。
【いもたつLife】