いもたつLife
アンダルシアの犬 1928仏 ルイス・ブニュエル

映像と音楽が本当はミスマッチなのに、そうではありません。
映像はあくまでも、普通ではありません。
また、普通に対して、何かを考えます。
でもやっぱり、表面的にしか意味はないのでしょう。
普通なんて意味はないのです。
人のように社会を形成している動物、本能だけで行動しない動物は、
人以外では、どこまでの知能を持っている動物でしょうか。
チンパンジーやオラウータンは、社会性がある・・・と考えていって、
身近に考えると、すごく大雑把ですが、犬がそれで猫が違うような気がします。
(犬という題名を忘れていました、そういう意味があるとは思いませんが)
猫が行動する元になる本能が、この映画の表現の元なのと感じます。
全く稚拙な表現ですが、これがしっくりする言葉です。
驚くことは、1928年にこういう表現をして、
世間がどう評価したかはわかりませんが、これが望まれる土壌があったことです。
映画の持つ新しい力を表現しています。
現代でもきっと、今までにない可能性が映画にはまだまだあるはずです。
【いもたつLife】
類人猿ターザン 1932米 W・S・ヴァン・ダイク二世

象をはじめとして、ライオン、チーター、かば、牛、シマウマ、
原住民とアフリカが舞台だけあって賑やかでした。
象牙で儲けようという設定は、隔世を感じますが、
それが他のものに置き換わっているだけですから、
本質的な違和感はありません。
ターザンがジェーン(主演の女優)をみそめるのは、解るのですが、
ジェーンは文明を捨てて何故ターザンのもとにいることを選んだのでしょうか?
ターザンのような生き方は、誰もが少なからず持っている憧れでしょうか?
意識化にあるかどうかと、その強弱は個人差が結構あるけれど、
本能が求めていることなのかと思いました。
ターザンを知らない人はいないでしょう。
だけど私は本当に久しぶりにみました。
この映画はかなり古いですが、私の中のターザンと同じでした。
水戸黄門のようです。
【いもたつLife】
イレイザーヘッド 1979米 デヴィッド・リンチ

頭で考えると難解といえるのですが、
実は難解ではないかもしれません。
何?というより、そうなんだ。
と感じる心の声を聞きたいと思いました。
だからと言って、この映画を「~~だ」と表現するかは難しいです。
その必要は無意味(ではないとも感じます)かも。
私の印象は、赤ん坊が可愛かったです。
それを感じたことで、この映画を観て良かったとも思っています。
この映画は人によってとんでもなく解釈は違うでしょう。
普通の人という存在なんてありえないと、つくづく思いました。
それが普通なんですね。
【いもたつLife】
崖 1955伊 フェデリコ・フェリーニ

紆余曲折があって、詐欺師が良心を取り戻すのですが・・・。
年老いたこと
(そういっても48歳ですから、現代では充分に若いのですが)に苦悩し、
離れている娘が大人になるのと、騙した家の娘が娘と重なり、
それが転機となりラストに続きます。
転機というのは、あくまできっかけです。
年を重ねて詐欺師の自分をどう考えていたのでしょうか。
泥棒の言い分かもしれませんが、
詐欺にも色々あります。
あくまで悪いのは騙す方ですが、相手の欲がギラギラしている場面もあり、
騙される方の卑しさがにじみ出ている時もあります。
それとは無縁の聖女のような娘に合った時が転機でした。
年をとることの恐さは、肉体的に老いてゆくことはもちろんですが、
年にみあった精神の成長がないことの方が恐いと、
大人になりきれていない、
この詐欺師とほぼ同じ、いい年の自分が重なりました。
【いもたつLife】
勝手にしやがれ 1959仏 ジャン・リュック・ゴダール

ゴダールの真意を、一度でそれを把握することはできませんでした。
(二度でもそれなりですが)
画期的です。
この映画を観ると、他の映画がわかるからです。
主人公ミシェルはどうしようもないけれど、
私の分身でもありました。
人は殺せないけど、過去にはミシェルのような自分がいました。
立ち居振る舞いもかっこいいとあの時の自分は言います。
でもそれもこの映画では断片です。
映画であって、映画を観ている気がしなくなります。
音楽にひたる瞬間だったり。犯罪=過去の悪いことをした瞬間だったり、
女をどうしようもなく抱きたい時だったり、愛している心を実感する時だったり、
受け手の感覚でしょうけれど。
跳ねるような躍動と、
「貴方ならどうする」も感じます。
今はそんな風に感じました。経験を重ねて時折観てふりかえる映画です。
【いもたつLife】
眠るパリ 1923仏 ルネ・クレール

時を止めるという映画が、1923年につくられていたことに驚きです。
それをエッフェル塔はじめ、パリの風景を描写しながら描く所が粋です。
自分たち以外の時が止まったら何をするか?
最初は戸惑い、不安になり、その後自由になり、悪が開放され、
その後また不安になり、最後は絶望でしょうか。
このストーリーはそこまでを追っていませんでしたが、
心はそこまで急ぎます。
サイレントの時代は、観る者にどこまでわからせるか、
わかってもらえば良いか、大事な前提だっただろうし、
それを知りたくもなります。
そして、この映画はどこまで語れるかにトライしたのではないでしょうか。
【いもたつLife】
巴里の屋根の下 1930仏 ルネ・クレール

サイレント映画の中に最小限の台詞が入ります。
サイレントの名残りと、その良さを感じます。
そして、歌が心地よく残ります。
映画の題名どおり、80年前の庶民のパリを映しています。
けっして豊かではないけれど生き生きした生活や恋。
小悪人はいますが、人情があります。
楽しいときもありますが、
やっぱりさびしいときの方が多いことを感じさせますが、
次の日の朝は、
もう一度一からはじめるさ。
失うことは恐いけど、最初は何もなかったし、
振り出しに戻ることって人生では何回もあるさ。
そんな言葉が響きました。
【いもたつLife】
アメリカの夜 1973仏 フランソワ・トリュフォー

映画製作の映画です。
トリュフォー自らが映画監督として出演しています。
過去の偉大な映画や映画監督、俳優に敬意を現わしています。
もっとたくさんの映画を観た後にもう一度みたい内容です。
映画の素晴らしさはもちろんですが、
仕事と人生という切っても切り離せないものを映画製作映画を通して、
トリュフォーの考えを語っています。
劇中劇での配役=俳優陣がひとくせある役で、トラブル続きで
(それがより効果ありでしたが)
ちょっとすると、深刻になるところを、スマートに展開してゆきます。
そういう点でも“すっ”と心に入ってくる作品でした。
リズムもよく、考えて考えて練り上げたこともわかります。
見ごたえありです。
【いもたつLife】
にんじん 2003仏 リシャール・ボーランジェ

こういう母親のもとに生まれなくて良かったという位に残酷な母、
から独立してゆく、にんじんと呼ばれる10歳の少年の話です。
ラストでは、去ってゆく(寄宿学校に行く)にんじんに対して、
なぜか母親は泣き崩れます。
もう自分のわだかまりをぶつける相手がいなくなることを嘆いているのでしょうか。
それとも後悔でしょうか。八つ当たりに気づいたのでしょうか。
失って初めて、愛情に気づくとしたら、そんな愛情なんて有難くもなんともありません。
せめてこの母親が、自分の都合で子供を憎んでいたことだけは、
解った涙であって欲しいと思いました。
この子は深い傷を負っています。
新しい仲間と、すんなりとはうまくゆかないでしょう。
だけど自分が選んだ道だから大丈夫と、父親と同じ気持ちで送り出しました。
【いもたつLife】
わらの男 1957伊 ピエトロ・ジェルミ

ごく普通の家庭がある男と、家は貧しいけれども婚約者もいる女、
二人は愛し合います。不倫ですね。
心が行きたい方へ進み、いずれ別れるのをわかりながらも、
二人が着いた場所には、空虚や寂しさがありました。
今までと、今の自分にあった空虚やむなしさを補うためだったのに、
それを確かめるかのようになってしまいました。
という感じを感じました。
女は求めてはいけないけれど、どうすることもできなく・・・。
男は良心が耐えられなくなると、楽になりたく妻を頼ります。
(結婚した女は妻にも母にもなります)
男の弱さや友情、家庭愛を「あなたはどうとらえますか」と
進行とともに少しずつ心に訴えてくる映画でした。
(小津安二郎を連想しました)
【いもたつLife】