いもたつLife
勝手にしやがれ 1959仏 ジャン・リュック・ゴダール
ゴダールの真意を、一度でそれを把握することはできませんでした。
(二度でもそれなりですが)
画期的です。
この映画を観ると、他の映画がわかるからです。
主人公ミシェルはどうしようもないけれど、
私の分身でもありました。
人は殺せないけど、過去にはミシェルのような自分がいました。
立ち居振る舞いもかっこいいとあの時の自分は言います。
でもそれもこの映画では断片です。
映画であって、映画を観ている気がしなくなります。
音楽にひたる瞬間だったり。犯罪=過去の悪いことをした瞬間だったり、
女をどうしようもなく抱きたい時だったり、愛している心を実感する時だったり、
受け手の感覚でしょうけれど。
跳ねるような躍動と、
「貴方ならどうする」も感じます。
今はそんな風に感じました。経験を重ねて時折観てふりかえる映画です。
【いもたつLife】
眠るパリ 1923仏 ルネ・クレール
時を止めるという映画が、1923年につくられていたことに驚きです。
それをエッフェル塔はじめ、パリの風景を描写しながら描く所が粋です。
自分たち以外の時が止まったら何をするか?
最初は戸惑い、不安になり、その後自由になり、悪が開放され、
その後また不安になり、最後は絶望でしょうか。
このストーリーはそこまでを追っていませんでしたが、
心はそこまで急ぎます。
サイレントの時代は、観る者にどこまでわからせるか、
わかってもらえば良いか、大事な前提だっただろうし、
それを知りたくもなります。
そして、この映画はどこまで語れるかにトライしたのではないでしょうか。
【いもたつLife】
巴里の屋根の下 1930仏 ルネ・クレール
サイレント映画の中に最小限の台詞が入ります。
サイレントの名残りと、その良さを感じます。
そして、歌が心地よく残ります。
映画の題名どおり、80年前の庶民のパリを映しています。
けっして豊かではないけれど生き生きした生活や恋。
小悪人はいますが、人情があります。
楽しいときもありますが、
やっぱりさびしいときの方が多いことを感じさせますが、
次の日の朝は、
もう一度一からはじめるさ。
失うことは恐いけど、最初は何もなかったし、
振り出しに戻ることって人生では何回もあるさ。
そんな言葉が響きました。
【いもたつLife】
アメリカの夜 1973仏 フランソワ・トリュフォー
映画製作の映画です。
トリュフォー自らが映画監督として出演しています。
過去の偉大な映画や映画監督、俳優に敬意を現わしています。
もっとたくさんの映画を観た後にもう一度みたい内容です。
映画の素晴らしさはもちろんですが、
仕事と人生という切っても切り離せないものを映画製作映画を通して、
トリュフォーの考えを語っています。
劇中劇での配役=俳優陣がひとくせある役で、トラブル続きで
(それがより効果ありでしたが)
ちょっとすると、深刻になるところを、スマートに展開してゆきます。
そういう点でも“すっ”と心に入ってくる作品でした。
リズムもよく、考えて考えて練り上げたこともわかります。
見ごたえありです。
【いもたつLife】
にんじん 2003仏 リシャール・ボーランジェ
こういう母親のもとに生まれなくて良かったという位に残酷な母、
から独立してゆく、にんじんと呼ばれる10歳の少年の話です。
ラストでは、去ってゆく(寄宿学校に行く)にんじんに対して、
なぜか母親は泣き崩れます。
もう自分のわだかまりをぶつける相手がいなくなることを嘆いているのでしょうか。
それとも後悔でしょうか。八つ当たりに気づいたのでしょうか。
失って初めて、愛情に気づくとしたら、そんな愛情なんて有難くもなんともありません。
せめてこの母親が、自分の都合で子供を憎んでいたことだけは、
解った涙であって欲しいと思いました。
この子は深い傷を負っています。
新しい仲間と、すんなりとはうまくゆかないでしょう。
だけど自分が選んだ道だから大丈夫と、父親と同じ気持ちで送り出しました。
【いもたつLife】
わらの男 1957伊 ピエトロ・ジェルミ
ごく普通の家庭がある男と、家は貧しいけれども婚約者もいる女、
二人は愛し合います。不倫ですね。
心が行きたい方へ進み、いずれ別れるのをわかりながらも、
二人が着いた場所には、空虚や寂しさがありました。
今までと、今の自分にあった空虚やむなしさを補うためだったのに、
それを確かめるかのようになってしまいました。
という感じを感じました。
女は求めてはいけないけれど、どうすることもできなく・・・。
男は良心が耐えられなくなると、楽になりたく妻を頼ります。
(結婚した女は妻にも母にもなります)
男の弱さや友情、家庭愛を「あなたはどうとらえますか」と
進行とともに少しずつ心に訴えてくる映画でした。
(小津安二郎を連想しました)
【いもたつLife】
アリゲニー高原の暴動 1939米 ウィリアム・A・サイター
アメリカ独立前、開拓時代の西部劇です。
「駅馬車」のジョン・ウェインとクレア・トレバーが主演です。
ジョン・ウェイン側、軍隊側(悪役の商人が絡む)、インディアン側の三者が
物語を進めます。
当然ジョン・ウェイン側が正義の味方で、正義を貫いて苦難を超える、という
期待通りの展開で、みていて安心映画です。
そんな西部劇的な良さ以外での注目は、
法の遵守と当時の司法の有様の描き方です。
日本では(あくまでイメージどしての表現ですが)大岡越前が裁いていた時代です。
とてもアメリカ・イギリス的を教えてくれます。
あくまで法を守る姿勢とそれを真摯に受けてその期待に応える。
これが積み重ねられることを想わせるシーンです。
西部劇では、裁判のシーンがさりげなくでも現れることがよくあります。
西部劇は、アメリカの精神が入ってることをよく感じます。
この映画も主役二人もみものですが、そんなシーンを楽しむ映画でもありました。
【いもたつLife】
恋の情報網 1942米 レオ・マッケリー
戦時中のドイツを中心とした情勢をリアルタイムで写した映画です。
実写でヒトラーも登場します。
シリアスな内容ながら、ブラックユーモアを絡め、サスペンス色や恋愛模様もある、
盛りだくさんな内容でもあります。
戦時中のアメリカ映画だけに国策感は漂いますが、
それを補う上出来な作品です。
もちろんケーリー・グラントとジンジャー・ロジャースも良いですし、
時折真剣さが試される展開に渇を入れられます。
誤解を承知で書きますが、
この頃までのアメリカはとても偉大な国です。尊敬できます。
国策感を割り引いても、また、この映画以外の映画でもそれを感じます。
こういう感覚を想わせるということは、
映画は時を経っても真実を写す(偽りが収めらてれもそれ自体が真実です)
20世紀に誕生した人類の知恵のように思います。
【いもたつLife】
志の輔らくご in Shizuoka
落語好きを自称していますが、
CD落語ファンなので、生は年に一度くらいです。
志の輔も生は初めて。
今一番チケットが手に入らない落語家の評判どおりの内容でした。
噺二つももちろんですが、(前座あり)三味線ありもOK。
この講演は静岡第一テレビ30周年行事の一環なのですが、
最後には、それを祝って志の輔みずから三本締めもありました。
偉いなぁ~と歓心しました。
なかなかできないことです。
もちろん落語も一級でした。
CD落語ファンが贔屓にしている、
故人の名人にひけを取らない数少ない現役落語家です。
【いもたつLife】
情婦マノン 1948仏 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
二人はともに深く愛しているけれど、生き方、性格は違います。
独占したい男と、束縛なら別れる方を選ぶほど嫌な女、
嘘をつけない男と、金のためなら体も売るし人を騙すのもいとわない女。
普通では成立しないカップルですが、
同じ時間や同じ体験を重ねたから二人はこの道をたどったのでしょう。
それぞれ孤独でもあったのでしょう。
二人はどんな時も離れられないのだから、
どんな時も幸せだったことを、死別で確認できます。
うすうすの感覚が確信となりました。
こんな物語を描くことができる感性はすばらしいですが、
そこには計り知れない寂しさを想像します。
【いもたつLife】