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いもたつLife

【歌舞伎座】壽 新春大歌舞伎 通し狂言十六夜清心(いざよいせいしん)

世話物の歌舞伎らしく、恋仲の二人の主役の心中から始まり、紆余曲折あり、ラストはあっと驚きます。
世の中広いようで狭い、そして縁あるモノが絡み合うのは歌舞伎ではおなじみですが、実際にもあることです。
「悪いこたぁできねぇ」の台詞通り、歌舞伎の登場人物よりもはるかに凡人の自分は身に染みる言葉です。

二幕構成で場が5つあり、その舞台を高速で立ち上がらせるのはいつもと同様です。それを観ていると、筋を追いつつどこの場面を強調するかの演出効果を狙い、それにピッタリの舞台を準備する、そのどこを狙うかがしっかりと考えられて、脚本、演技が練られていることが、段々と解ってくるとますます歌舞伎は面白くなります。
そして様式美も解ってくると尚更でしょう。

今年も足を運びたいです。

【いもたつLife】

日時:2023年01月11日 15:22

初日に観劇でした。

初日に観劇でした。
講演前に舞台挨拶あり、その後、大神楽あり、幕間には獅子舞がありです。
本講演も、楽しい遠山の金さん、最後の大詰めは出演者揃っての桜の前での舞踊、日本のお正月を満喫できる歌舞伎でした。
良い年を迎えられました。

【いもたつLife】

日時:2023年01月05日 14:58

【SPAC演劇】守銭奴 あるいは嘘の学校 ジャン・ランベール=ヴィルド 演出

主人公のアルパゴンは筋金入りの守銭奴。それに加えて息子と恋人を取り合う父親。劇はアルパゴンと彼の周りの彼に振り回される輩たちの痛快な喜劇です。

もう年老いてきているアルパゴンが金に執着するその気持ちは解らないでもないですが、それが目に余ります。そして恋人を巡ってなぜ息子と確執するのか?
そのどの行為もあまりにも大人げない。
死への不安でカネが頼りなのか、若い妻を娶ることが安寧をもたらすからなのか、そのアルパゴンの心は大きな喪失の埋め合わせなのでしょう。それは亡くした妻の存在ではないでしょうか。
妻は親とも子とも違った特別な存在です。その喪失はどんなモノでも埋め合わせができない、それに抗っているアルパゴンの姿は愛おしくもみえました。

それはおいておいて、このアルパゴンと出てくる輩たちの滑稽さがご機嫌の喜劇に仕上がってました。
演出のジャン・ランベール=ヴィルド氏も言及していましたが、SPACの俳優はじめ裏方のみんなが、この劇の演出の意図を十二分に理解し具現化しているとのこと。
納得できました。

【いもたつLife】

日時:2022年12月22日 11:33

【歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵】国立劇場

落語「殿中でござる」「中村仲蔵」春風亭小朝
歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場 二つ玉の場
六段目 与市兵衛内助勘平腹切の場

小朝師匠はぜひとも観たかったので歌舞伎とのコラボは渡りに船でした。
昔からの芸風そのままで、少し早口のリズムに乗っての語りはを十二分に楽しめました。
「殿中でござる」で「中村仲蔵」につなげ、「中村仲蔵」は後半の歌舞伎につながります。その役割をわきまえていて、かつ、沸かせる落語にもなっていました。
落語の合間の神楽も見事でした。

そして勘平が主役の忠臣蔵五段目、六段目です。
落語「蛙茶番」や「四段目」の枕に素人芝居で皆が皆“勘平”をやりたがるとありますが、今回それが腑に落ちました。
命をかけても仇討に名を連ねる、そのために必死の行為が裏目に出ても悔いない、それを家族も支える。
赤穂の討ち入りが当時の人々の心をとらえたのを後から窺い知るに十分になるのは仮名手本忠臣蔵を観ると説得させられるのですが、この勘平の脚色もそれが反映されています。
そして歌舞伎がこの場面を我こそはと演じるからこそ、いつの世にも魅力を発しているのを感じました。

【いもたつLife】

日時:2022年11月29日 10:54

彼女のいない部屋 2021仏 マチュー・アマルリック

映画はクラリス(ヴィッキー・クリープス)とその家族に何かが起きたことを、クラリスの目線で粛々と語られます。
このクラリス目線というのが味噌で、過去と現在の現実とクラリスの多分想像の二つの軸が交錯して示されます。
現実もクラリスが今感じている現在や彼女が振り返りたい過去の事実を映しているので、もう一つの軸の彼女の想像と遠く離れていない感触の映像です。

この家族に何が起きたのかが段々と判明していくそれまでの映像クラリスの心情であったことが痛感していきます。
そしてだからこのような構成をとったことも納得していくことになります。

造り手がクラシスの途方もない喪失感をどうすれば伝わるかを伝えようとして出来上がつています。
斬新な伝え方です。

【いもたつLife】

日時:2022年11月20日 15:57

【義経千本桜 四段目】国立劇場

道行初音旅 清元連中・竹本連中、河連法眼館の場

この段は、忠信と忠信に化けたキツネの二役をどう演じるかがキーということで、その通りで、尾上菊之助がみせてくれます。
この通しの「義経千本桜」は尾上菊之助が、二段目の知盛と忠信、三段目のいがみの権太を演じるのが目玉ですが、この四段目は他にもましての見事さでした。

この段は舞踊で始まりますが、これが活きている演出で、これまでとは違う歌舞伎の凄さと面白さを堪能しました。

同じ物語を何度も観たくなるのは、物語自体の面白さはもとより、歌舞伎も文楽も何百年も培われてきた演出方法や名演技を既習し超えようとするからで、深さは半端ではないことを実感します。

【いもたつLife】

日時:2022年10月28日 16:14

【義経千本桜 三段目】国立劇場

下市村椎の木の場、下市村竹藪小金吾討死の場、下市村釣瓶鮓屋の場

つくづく凝っている脚本です。
この段の主役は“いがみの権太”で、権太はその通り名の通りほとほと“いや”な輩ですが、段の終わりには様変わりで悲劇の忠心者に変わります。しかも権太の意を汲む妻子までが命を投げ捨てるのです。
その権太をどう観客が捉えるかになりますし、演者はどう役作りするかになります。

その権太の周りを固める人物像も、話の進め方も、本当によくできている物語で、これは誰がどうやるかと、どこに焦点を絞るかで見ごたえと見どころが変わってきますし、それが歌舞伎や文楽の楽しみであることが、うっすらと解ってきました。

【いもたつLife】

日時:2022年10月27日 16:13

【義経千本桜 二段目】国立劇場

伏見稲荷鳥居前の場、渡海屋の場、大物浦の場

静御前との別れ、弁慶と忠信との主従のやりとりを見せておいて、場が変わり、知盛との対決に移ります。その序盤は、義経勢と知盛勢との知略があり、そこに安徳帝の生死が関わってきます。盛り上げておいて義経たちと知盛との決着になります。

人気演目らしく、とてもよく出来ています。伝えられているわけです。
この段では数々の歌舞伎役者が知盛を演じてきて、凌ぎを削ってきたことが伺えます。

今回国立劇場で義経千本桜が通しで観られるということで楽しみにしてきましたが、この二段目、まずは堪能できました。

【いもたつLife】

日時:2022年10月26日 16:12

【グランシップ文楽2022】

「花競四季寿」より万歳・鷺娘/「冥途の飛脚」~羽織落としの段~封印切の段/「団子売」/「菅原伝授手習鑑」~寺入りの段~寺子屋の段

昼の部、夜の部、合間に文楽の解説講座がある三本立てで文楽三昧の一日でした。

昼の部も夜の部も“舞踊”で始まり“主文楽”になります。
昼の部は世話物が主で、それに準じた“舞踊”でした。
夜の部は時代物が主で、舞踊は裏腹の楽しい“舞踊”でした。

文楽も回を重ねて観てきて、人形の動きと浄瑠璃の圧倒的な語り、また三味線が物語の背景や人物の心情を表す効果が、頭ではなく感覚で解ってきて、深みに酔いしれるというのが今回の観劇でした。

人形のしなやかな動きは、三人で操っている息の合った芸術芸に驚きますが、それ以上に人の仕草そのものに見えます。語り手の浄瑠璃の迫力はナレーションと台詞で語り方が違い、台詞と人形が相まみえると人形の仕草に言葉が宿るようです。もちろん三味線も浄瑠璃を後押ししています。

文楽は、人形を使って観る者に人形ではないと錯覚させる力があります。

【いもたつLife】

日時:2022年10月25日 16:11

【spac演劇】ペール・ギュント 宮城聰 演出

10年ぶりの上演ですが、“ペール・ギュント”の一生を明治維新後の日本になぞらえて作り直されての再演です。すごろくをモチーフの舞台は変わりませんが、雰囲気もセリフ回しも衣装も、そしてテーマも違ったものでした。

ペール・ギュントはエネルギッシュでやんちゃでエゴイストで、どちらかと言えば良い人間ではありません。その姿を若かりし頃の日本、そして老いていく日本に重ねます。
でもこの演劇、やはり個人の生き方を示唆しているのは変わらないという感想です。

やりたいことをやってきたペールに、ボタン職人は「自分らしかったか?」と問います。ペールは自分らしく生きたと言い張りますが、ボタン職人はそれを拒否します。
これは痛烈に観る者を皮肉っています。
最期ペールは、棄てたソルヴェイに安らかさを与えられます。ソルヴェイだけがペールの味方でもあるように見えます。これも私たちの人生に重なります。

劇は、ペールの壮大な生き様を活き活きと、また波乱万丈に、巧妙なセットと力強い打楽器、そして次から次に繰り出してくる姿も形も立場も違う演者の中で、あくまでもペールが主役で突き進みます。
ペールは人生の終わりにどう落とし前をつけるかに焦点が絞られます。
徐々に年老いていくペールで、生きていく選択肢が狭まれていくという、これも避けることができない我々の姿です。
死ぬ運命を背負う人間の一生懸命に生きても大したことはない人生を謳っているようです。

でも皆それに抗っている。そしてソルヴェイがいるかもしれない。そんな「ペール・ギュント」でした。
主役の武石さんに拍手です。

【いもたつLife】

日時:2022年10月24日 16:10