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ブログ 今日のいもたつ

銀幕倶楽部の落ちこぼれ

にあんちゃん 1959日 今村昌平

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極貧の四兄弟が食うことはおろか、
住むところも追われ、離れ離れで暮らすしかない。
けれど、なんと逞しく生きて行こうとするか。
という、勇気と、甘えを吹き飛ばせの、
メッセージ満載の映画です。

昭和28年頃、炭鉱町は閉山となる時代。
この兄弟は親を亡くし、長男・長女は働くが、
職を追われ、無い無い尽くしになり離れ離れに。

炭鉱町が役割を終えた様子もふくめ、
在日朝鮮人の差別や、彼等の結束、
また、まわりの人達の良心と、
食うことに困る本音、
それらを、訥々と造り手が感情を入れずに映すから、
受け手は素直に四兄弟(特に下二人の兄妹)が生き抜く姿に
見入ります。

炭鉱から、いの一番に追われた長男も
最後まで残った労働者もほんの少しの時間差で、
斜陽産業のあおりを受けます。
移ろう社会の姿、当時の激しい変化は、今に通じます。
人生は短いですが、その間多くの出来事にぶつかります。
今が良いとしたら、運がよかったのと、
今が良いといううちに準備は不可欠です。

この映画は感動させようとしてつくられていません。
だから、
この時代を生き抜いて来た人達も、
今の裕福な日本しか体験していない人達も、
あの時代の日本を(懐かしく)冷静に見つめることができます。
この映画も多くの人に観て貰いたい一本です。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年05月06日 06:31

その夜の侍 2012日 赤堀雅秋

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ある夏の日の3日間、
5年前にひき逃げで妻を殺された主人公が、
出所して、ノウノウと悪のままのさばっている男に復讐する、
というのが骨子ですが、
両者を取り巻く人間とのつながりがテーマです。

限られた時間の中で限られた人との中で生きるのが人生です。
もちろん誰と何をするかは自分が決めていることですが、
それを自覚していることはあまりありません。
ただなんとなく過ごしている。
不本意な奴と一緒にいることも、
また今日も不本意な一日であったとしても、
それはそれで仕方ないとしている。
ということを肯定も否定もしないで浮き上がらせています。

妻を失う=生きる価値を失う主人公、
支えは復讐で、それを想うことで生きている自覚を得ます。

それに対して、やりたいことを持たない、
気に入らないことが降ってくると、それに悪意で反応することで
生きる自覚を得る男。

そんな二人と関わりあう人達も、
二人をダシにして自分が生きている実感を得ようとしています。
それが無自覚であっても。

登場人物は皆、孤独ではいられないという選択をします。

生きることを崇高な観点からではなく、
泥臭い日常から見つめていく映画です。

ひとつ不満です。
この映画の設定の各所に現実感をそぐ部分があったことが気になりました。
私の主観ですが、惜しいと感じたので、一言。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年04月09日 07:33

最初の人間 2011仏/伊/アルジェリア ジャンニ・アメリオ

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不合理、理不尽、
生きている上で直面します。

世の中には、
支配、略奪、悪意、がまかり通ります。

この映画はアルベール・カミュが想うことを、
問題提起としてこちらに提示します。

1924年のアルジェリアの主人公(カミュの分身)の回想と、
1957年に作家としてかなり成功した主人公がアルジェリアを訪れての想いが、
紡がれていくように映画は進みます。

そこにはみせる物語はありません。
主人公の過去と現在(1957年)の状況説明だけです。
主人公が育った状況と環境、
その後、世界的な作家になった立場と持てた力をこちらに説明し、
でも、
世の中に対しての個の無力をただただ映します。

それは、人ができること、したいことへの非情な現実と
そこに身をおく、それを受け入れる心の尊さと、
生きること自体のむなしさと、
むなしいだけでないことを意味づけする行為(淡々と生活する人達)
も映します。

主人公の故郷はアルジェリアです。
そして祖国はフランスです。
当時のアルジェリアはフランスからの独立を望んでいました。
主人公の父親はフランス兵として第一次大戦で国に尽し、戦死しました。
主人公の家族は貧しく、でもアルジェリアの人達とは違うフランス人です。

そんな生い立ちから世の中とは何かを深く追求し、
そのエッセンスをこちらに提示し、
こちらに世の心理を問う問題として投げかけたカミュの遺作の映画です。

詩の朗読のような映画です。
観客は頭に彼の問題提起を受け止めて、
これから答え探しを、いえ違います。
答えがない答えを求める旅に送り出されるのです。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年04月08日 07:00

俺の拳銃は素早い 1954日 野口博志

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日活のアクション映画というと、
石原裕次郎や小林旭ものを連想します。
それとは趣向が異なる映画です。

主演も共演も、どちらか言えば地味、
アクション見てよ!的な演出もなく、
良質のフィルム・ノワール感覚です。

話は単純ですが、ハード。
事件を究明して行く姿を熱くは語りません。
ロマンスもありますが、クールです。
子供との触れ合い等のエピソードも入りますが、
これらも一歩引いた醒めた描写です。
見せ場の銃撃戦が以後の日活アクション映画に近い感じです。

こんな雰囲気の映画があったとは知りませんでした。
中々の掘り出しもんです。

追伸
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今月のお宝ほしいも

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年04月07日 08:18

果しなき欲望 1958日 今村昌平

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戦後10年経った関西のある街、
戦時中の防空壕に隠してあった時価6000万円(当時)
のモルヒネを掘り出すために、4人の男と1人の女が集まった。
皆、癖がある輩達で、独り占めを企みながら協力して行きます。

欲にかられた5人グループが織りなす群像劇です。
サスペンスとコメディの中に、欲望をむきだしにする人を描きます。

むきだしにしているのは、もちろん5人組、
力技で大金を得ることを試みます。
行き着いた街には、彼等とは違うアプローチで欲望を満たそうとする
小悪人がいます。弱い者、無知な者から小金をくすねます。
罰せられないけれど、見ていて良い気分ではありません。
大きなリスクを背負って無理やりの5人組が可愛く、また、滑稽に見えます。

そして、ハツラツとした若者達もこの物語には登場します。

若者達は一見能天気です。
でも純粋です。欲望をコントロールできます。
それに対して、
5人組も小悪人も欲望をコントロール出来ません。
やっている結果はかなり違います。
5人組は、殺人もいとわない何でもありですから。
でも、小悪人も動機はほとんど同じです。
何処かでたかが外れてしまえば…。

しかしやっぱり違います。
ただ繰り返しますが思うところは五十歩百歩です。
若者達とは全く異なります。

最終的に欲望を抑えることが出来ないのが人かもしれません。

5人組を演じているのは、
殿山泰司、加藤武、西村晃、小沢昭一、渡辺美佐子です。
普段は脇役にまわりがちですが、
今回は実質主演です。
持ち味が存分に出ていました。

追伸
4/5は「清明」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「清明」の直接ページはこちら
清明

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年04月06日 07:39

“エロ事師たちより” 人間学入門 1966日 今村昌平

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男が求める性を満たすのがエロ事師で、
そのために大真面目に、お客の期待に応えます。

性欲と正面から向かい合っている映画です。
当然、ドロドロの部分、誰もが隠していたいような描写もあります。
そして、カメラは性欲のためならなんでもするような奴らを、
遠目から映します。
愚かで閉口してしまう行為の連続ですが、
格好なんて気にしないで本能を満たそうとする姿は、
エネルギッシュです。

性欲と共に、したたかに生きる生き方も映します。
性欲が本能なら、人を騙してでも楽して生きる生き方は、
本能に悪知恵を足したものです。

主人公もエロそのものですが、
ただひたすらにエロを追求します。
『人助け』とまで言い放ちます。

その姿は滑稽ですが、
所詮愚かな煩悩あふれる人そのものを肯定しています。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年03月30日 07:34

君の名は 第三部 1954日 大庭秀雄

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第三部は、
悪役としての位置づけの者達も、徐々に収斂されます。
それはイコール真知子と春樹がいよいよ結ばれるということですが、
一筋縄ではいきません。
真知子が病に蝕まれます。

最後まで引っ張ります。ハラハラさせます。

『悪い人なんていない、みんな良い人なのにみんな幸せに何故かなれない』
と真知子が憂います。
それに気づく悪役とそれに賛同する物語を動かす人達、
で事態は好転するのですが。

最後二人は念願がかないますが、その後は想像に任されます。

全編を通しての感想ですが、
二人の未来はどうでも良いのです。
二人が結びつく過程が全てですから。

『美意識を共感する』
それが、この物語です。
淡路千景が途中で言います。
『私にはできないことを二人はやり遂げようとする』
だから自分ごととしていると。
そして、最後の最後に数寄屋橋で忘却の定義を口ずさみます。

彼女が一番、当の二人よりも二人の物語をわかっていたようです。

二人は純愛ですが、美意識の中で生きていました。
どちらもかけが得ない崇高な生き様です。
二人はかなわぬ恋に、
触れることができないことに、
困難と直面し、それと対峙することに、
魂の消費を賭けていたのです。

当然その行為は他の登場人物を巻き込みます。
観客をも巻き込みます。

この物語は、物語と同化する者を、
同化するものが勿論持つ美しさの魂を肯定する物語だったのです。
(その定義に反発するアウトローがいることは置いておいて)

それは今では通じません。
あの時だからです。
日本が戦争から解放されるのに必要な自信を得るための、
日本人が持つ美意識をどこまでも追求する物語を、
次へ次へと引っ張る演出で魅せてくれた物語です。

だから歴史の一ページとして刻まれている物語であり、
その映画化です。
そして、映画化にあたって豪華キャストでつくられたことで、
今尚それを確認したいと思わせる映画として成り立っています。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年03月28日 07:35

君の名は 第二部 1953日 大庭秀雄

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愛し合う二人以外の進展はあるのですが、
各駅停車のような二人の関係です。

そんなメロドラマですが、
この物語は戦後間もない社会が反映されています。
主役の二人も含めて、登場人物達は失ったものがあり、
終戦後に遭遇した影を持っています。

この映画の公開はこの背景よりも十年程経っていますが、
まだまだ戦後の翳りを多くの人が抱えていたことでしょう。
物語には同じような体験の人物がいて、
でも二人は純愛を貫き、まわりはそれを見つめる。
登場人物と同じ目線で近い過去を振り返るということ。
(あくまで推測ですが)
人々は戦争との決着を、このドラマで体現していたのかもと思いました。

第三部へ続く。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年03月27日 08:01

君の名は 第一部 1953日 大庭秀雄

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くっつきそうで、くっつくのを心から望みながら
どこまで行っても堂々巡りメロドラマの、
もうこれは古典と言っても良いのでしょうか。

でも、上手い心理描写です。
大ヒットも頷けます。

東京大空襲の夜に命を共にした春樹と真知子、
一目惚れであり、命懸けの一夜の戦友であり、
惹かれ合いますが別れを余儀なく、そこからはじまるのですが、
いつ決着がつくのか。

真知子は浜口を亭主に選びます。
春樹を忘れることを誓って、浜口もそれを承諾します。
真知子は十字架を背負いました。
真知子の唯一最大の誤ちであり、
そこには同情の余地がなさそうなのですが、
段々風向きが変わります。

仏様の様な浜口でしたが、徐々に醜さ(本性でしょうか)が現れます。
母親がそれを後押しする、後押しする、です。
観ている方は、真知子の十字架を取ってやりたくなります。

真知子は尽くしましたが、心ここにあらずは浜口も感じとります。
でも頑張りました。
浜口もそれを承知の結婚でしたから、
もう一つ辛抱があれば展開は違ったのですが。
それと、育ちの問題、母離れできない男・子離れできない母
で問題はこじれて行きます。

そしてとうとう真知子は切り札を切りました。
実家に帰る行為です。
これは浜口にとっては、何よりも大事な面子の問題です。
でもこの切り札も、
妊娠という新たな出来事で。

ここまでが第一部です。

真知子の状況はいつのまにか仕方なく不幸になるという
王道なのでしょう。
そして、耐え忍ぶ春樹の姿がメロドラマ好きには
たまらないのでしょう。

この物語はやっぱり一度抑えておきたかったので。
劇場で鑑賞できて良かったです。

最後に、
キャストが豪華です。
また、
終始暗いシーンの連続の中、
夫婦のやりとりも、愛し合う同士のやりとりも。
その中で、淡路千景の役は明るく、
この映画では欠かせない、
息抜きできる、息継ぎできるという感じでした。

第二部へ続く。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年03月26日 08:15

手錠のままの脱獄 1958米 スタンリー・クレイマー

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『招かれざる客』同様二度目の鑑賞。
監督、主演、テーマも同じです。
時代はこっちの方が古い分、人種差別に対する嫌らしさがかなり強いです。
かなり先進的な映画だったことがうかがえます。
細部にそれを感じます。それだけに嫌らしいですね。

ただ、人種差別のことだけが細部に現れているわけではありません。
話の展開につながる部分で
細部に現れる登場人物の仕草やカメラワークは上手いと感じました。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時:2013年03月24日 08:55