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許されざる者 2013日 李相日
北海道の自然の映像が、そこに馬と人が進む画が、
時に悲惨で、時に和み、でもこの映画の底辺にはいつも人のイライラと怯えがあり、
美しい自然にどっぷりつからせない緊張感があります。
勝った者が負けた者達を支配する構図がこの物語の根底にあります。
官軍に負けた幕府軍、官軍に駆逐されたアイヌの人々、
大手を振る勝者は暴力で得た権力を暴力で守りきろうとします。
そして争いがあると常に苦しめられる弱者(女、子供)はこの物語でもやはり
虐げられています。
負けた者は生き延びようと必死です。
そしてようやく居場所を確保して安心と安全に、このままで良いという暮らしをしていました。
けれど、そうは問屋が卸しません。
官軍は、無理やり暴力で支配する構図の中に起こる不安を払拭するために、
過剰な暴力、弱者を根こそぎにしようとします。(屯田兵のアイヌに対する態度)
また、ようやく生きる場を見つけても自然がそれを許しません。(主人公が農家では食べられない)
追い詰められた者達が決起します。
主人公達は明日の糧のため、女達は許すことができないため、アイヌの人達も過去の清算のために。(アイヌは決起していません、アイヌと和人の間の青年が主人公に加わります)
主人公はかつて非情な男でした。人を殺めることを非情に徹して出来る男でした。
もちろん自分や自分達の身を守るためですが。
しかし安定を求めることで、時を経ることで非情さを封印していました。
封印していただけで、無くすことはできません。
それが目覚めていくというのが、この映画の骨子です。
禁忌を犯すごとく主人公は非情に戻ります。
主人公を庇う理由がたくさんあります。
官軍の無慈悲な支配、
身に迫る脅威、
弱者の救済、
義のため、
でも主人公は戻ってしまった自分を許せませんでした。
この映画は悲劇を生み出す社会を憂いています。
そしていつの世も多かれ少なかれそれが社会です。