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偽りなき者 2012丁 トマス・ヴィンターベア
人は感情で結論を出しておいて、理屈を付けてもっともらしくします。
最初から答えを準備しているのだから議論の余地なんてありません。
それが意識的ではないことがほとんどだから、話は厄介です。
そして、一度魔女狩りが起こると、それに加担することで正義の味方気分を味わいます。
この映画を含めて『完全な冤罪』の映画を観ると、
被害者になってしまう可能性はいつでもあり、その不安と、社会の脆弱さを感じ、
この映画では、実際に駆られてしまう恐怖に追い詰められてしまう錯覚まで起こります。
デンマークの田舎町、街の人々は皆が協力して生きています。
主人公のルーカスも幼稚園に勤めながら、街の同年代の男達とは家族ぐるみの付き合いを何十年も続けています。
仲間と一緒に飲み、遊び、仲間の子供達の父親・兄貴代わりとして、街に尽くす男、必要な男で、その中で生きがいも感じていました。
もしあの事件が起きなければ、離婚はしているものの、不幸な人生なんて他人事だったでしょう。
その事件とは、幼稚園の幼女クララ(ルーカスの親友テオの娘)の些細な嘘ではじまりました。
「ルーカスのおちんちんが立っていた」
ルーカスが大好きなクララの、ルーカスの気を引きたいがために出た言葉でした。この直前にクララの兄(中学生か高校生)からIpadの卑猥な映像を見せられて、「立っている」という言葉を植えつけられていただけでした。悪いシチュエーションは重なります。園長先生がそれを聞きつけたのです。
園長はこの時点で保身からか、ルーカスを変質者(犯罪者)に決め付けます。それを裏付けるために、教育委員のような男に相談します。男は園長と同じです。最初から決めています。だから、クララを誘導尋問にします。
(人は自分が安全地帯にいることができれば、日常でないことが起こって欲しいと望んでいる悪魔の顔があるのでしょう)
もちろん、犯罪を未然に防ぐことは大事です。可能性は極力排除する努力は必要ですが、自分の行為により何が起きていくのかを何も考えなさすぎです。
本当に、感性がないというか、安易なことをするのが人です。
実際に園長と男の安直な行為は、ルーカスの人生と家族を滅茶苦茶にし、クララの心に深い傷を負わせ、幼児を持つ家族に不安を与え、街中の人々に魔女狩りさせる怒りを植え付けました。
ひどい仕打ちが続き、ルーカスはぼろぼろになりますが、それでも心を折ることなく、街で暮らします。
街の人達(特にテオ)はその姿に、嘘をついているのはクララではないかと思い始めます。
そこから物語りは好転します。
そして1年の空白がありラストのシークエンスです。
その1年後は、ルーカスの息子の猟解禁日です。(成人式みたいな感じ)
ルーカスの疑惑も晴れて和やかに式典が進みます。そして明朝ルーカスは息子と初の狩りに出かけます。他の友人達も参加すています。
その狩りをしている最中に突然、
至近距離から“ルーカスが撃たれます”未遂ですみましたが。
(この前振りがあります。ルーカスの飼い犬が殺されるシークエンスがあります)
これで映画は終わりです。
一度魔女のレッテルを貼られた男は、その十字架を一生背負うのです。
この物語には悪人はでてきません。(強いて上げれば園長と男です。彼らは権力を持っていることに無自覚で、それは大罪です)
気が良い街の住民は魔女がいると魔女に対して鬼になるのです。
戦慄の映画でした。
(魔女にされてもルーカスを信じ、支援する者達もいました。冷静な判断ができる人達でした。これも現実です)
追伸
12/6に、12月の「毎月お届け干し芋」出荷しました。
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