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私の男2013日 熊切和嘉
題名通りの映画です。
主人公は腐野花。
奥尻島の震災で9歳の時に孤児になりましたが、親戚の腐野淳悟の養女になります。
高校生に成長した花は、淳悟を養父以上の存在としています。
父として慕うを通り越して、淳悟に男のすべてを求めるのです。
花が求めるすべてとは、淳悟自身のすべてと共に、花自身のすべてを淳悟に捧げ、それを淳悟に受け入れさせることでもあります。
淳悟は受け入れ、また淳悟も花に女のすべてを観ています。
もし無人島で二人だけで生きているとすれば、何も問題は起きなかったのですが、
残念なことに無人島ではないから、
親子でありながら、常軌を逸する二人の関係が気づかれると事件が起きます。
震災の時から花のことに親身になっている好々爺の大塩の目には、
淳悟の異常さが花を禁断の隘路に貶めているように見えるのです。
だから二人を引き裂く算段をするのですが、
花にとってはその行為は悪魔です。身を守る手段として大塩を殺害してしまいます。
そこからは二人の逃避行で、東京へ。
けれど安住はできず刑事が追ってきます。すると今度は淳悟が刑事を。
という展開です。
この物語はサスペンスではありませんから、二人が犯した社会的な罪への言及はありません。物語を構成する要素としては重要ですが。
花が震災から成長し、二人が二人の世界を完成させるまでの北海道での前半と、
逃避行後、花が大人の女に成長し、花は立場上だけ淳悟と別れ、結婚するまでの後半で、
時間の経過で二人はどうなっていくかということが綴られます。
花が淳悟を、淳悟が花を求めることが永遠には続かないのではないかと、
結局は長い人生でのひと時の戯れになるのではないかと、
私は時間経過で二人が変わるのではないかということがとても興味深く、この映画はそれに応えてくれました。
私の予想は見事にはずれました。
二人が二人を求める心は永遠だったのです。
振り返れば当然でした。
お互いはお互いのすべてなのだからです。
花にとって淳悟は、恋人で夫で、父で、そして息子です。淳悟も同じく花は恋人で妻で、母で娘です。
切れるわけがないのです。
花は、奥尻島での震災での心的外傷が、
淳悟は、子供の頃の家族環境があまり好ましくなかったことが、この根深い関係の原因ということを映画は仄めかしますが、それらは二人が寄り添うことになる引き金でしかない、原因のひとつでしかない、位です。少なくと私は映画からはそう解釈しました。
だからもっと大きな力が二人に働いていたはずです。
それは何かまではピン来るものはないのですが、
花が淳悟に、淳悟が花に、すべてを求める心の動きは特別なものではないということが、私の心の中にも潜むことも否定できなくて、また、ひっかかります。
映画では淳悟は最後は甲斐性なしのダメ親父に成り下がっています。
けれど、花を愛する結婚の相手を含め、登場する二人の若者(将来性も経済力もある)にまったく負けていないのです。
花にとって必要な男としてです。
社会的に優位に見える価値観を否定しているかのようなラストです。
人と人との関係性は何よりも勝ると言いたいような描写です。
花と淳悟は互いに永遠の存在です。
ただ社会的には二人の関係は認める訳にはいかないというだけなのです。
二人はそれを取り除いてしまって二人の世界を築いていたのです。
そしてそれは何事にも換えることができないものだったのです。
追伸
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