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フットノート 2011イスラエル ヨセフ・シダー
権威やブランドと無縁では生きられないのが人。
そして、父子といえども、いや父と子だから余計に相手同士を認められないのも人の性で、
そんな社会や人間関係を皮肉っぽく描いた映画です。
父エリエゼル・シュコルニクも息子のウリエル・シュコルニクもタムルード(ユダヤ教の経典)の優秀な研究者です。
朴訥で頑固なエリエゼルは、本質的な研究を30年続けています。優秀なのですが、世間に認められた成果は出していません。
それに引き換えウリエルは、成果を得るのが上手く、様々な栄誉を勝ち取っています。
イスラエルで最高の学術賞であるイスラエル賞の受賞の電話が、エリエゼルにもたらされました。彼は20年間候補者に挙げられながら、毎年受賞を逃していた、また主だった賞を受賞したこともなかったことから、長年の努力が認められたと喜びます。
しかし、イスラエル賞の真の受賞者はウリエルで、間違い電話だったことが、学会に呼び出されたウリエルに伝えられます。
ウリエルは、審査委員に必死にエリエゼルを受賞者とするように主張します。その大きな理由に、エリエゼルが陽の目を見ないのは、審査委員長のグロスマンがエリエゼル憎さからであって、彼の研究成果が劣っているのではなく、グロスマンの人的工作のため、だからエリエゼルは立派に受賞の価値があるというのです。
それに抵抗するグロスマンですが、必死に説得するウリエルに折れて、エリエゼルを受賞者とします。ただし二つ条件を出します。
ひとつは、エリエゼルの受賞理由はウリエルが作成すること。
もうひとつは、ウリエルは永久にイスラエル賞を辞退すること。
ウリエルは二つの条件を受け入れます。
そんなやりとりを知らないエリエゼルは、受賞のための新聞の取材で、ウリエルを批判します。上っ面の研究しかしていない研究者だということを辛辣に公言したのです。
そして研究とは自分がやってきたような、地道で地味なものだと主張したのです。
面白くないのはウリエルです。自分がどれだけ骨を折って父に華をもたせたことか。
今回だけでなく、彼は父がイスラエル賞を受けられるように毎年画策をしていたのです。
ところがある時、エリエゼルはイスラエル賞の受賞理由はウリエルが作成したものだと気がつきます。物語では明らかにされませんが、多分エリエゼルは、真実を悟ったはずです。でも映画は受賞式典に臨むエリエゼルの姿で幕になります。
ウリエルは父の研究の一番の理解者であり、その価値も一番解っていましたし、自分にはできない研究をしていることも認めていました。
ただ、時代遅れの研究者であるとも思っていました。
エリエゼルもウリエルの優秀さは認めていました。そして誇りだとも思っていたでしょう。ただウリエルは、要領の良さで数々の名誉を受けているということを、嫉妬心から強烈に抱いていました。
二人ともお互いを認めていながら、仲良くやることができないのです。
主義主張が違うという議論さえしないのでしょう。
それは、人が人を評価する権威やブランドというものがまっさらのその人物の評価を妨げるからです。
非常に皮肉な結果です。
エリエゼルはイスラエル賞をもらったことで、やはり我の研究は息子以上だと、それが当たり前だと自分を納得させるでしょう。
でも真実は息子が取った賞だったと気付いています。
でもそれを認めることは無いでしょう。
息子も永遠に自分は父以上という意識で生き続けます。
いったい名誉(権威やブランド)は、何をもたらすのでしょうか。
そして、父と子であっても競い合い、お互いよりも優位にいたいとしてしまうのが人間です。どこまで自分が可愛いのでしょう。
そんな、人が生きる上での避けられないシステムや性格を巧みに示した映画でした。
追伸
12/22は「冬至」でした。二十四節気更新しました。
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干し芋のタツマ
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冬至