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【SPAC演劇】小町風伝 イ・ユンテク演出 太田省吾作
SPACの劇場の中でも、贅沢な空間の楕円堂での公演、しかも当日は、亡き太田省吾さんの奥様と、1977年にこの演劇を初演した際の役者さんたち数名も観劇という、緊張感溢れる中で開催された「小町風伝」は、個人的にはとても感動した演劇となりました。
小町は既に老婆になっています。失禁までしてしまう程、かつての美しさはありません。もう余命もいくばくもない様子、そんな彼女はかつての絶世の美しさの姿のままの自分を妄想しながら生きています。
ですから舞台上は、老婆の小町と絶世の美女である小町の二人が、対になっています。
老婆の妄想は、愛し愛された少尉との逢瀬。でもその少尉が戦地に去っていく場までも現れてしまいます。
当然ですが、老婆は妄想の中だけで生きていくわけにはいきません。
現実には大家が様子を見にきますし、隣家の生活も目に入ります。嫌でも現実に引き戻されてしまうのですが、その現実を交えて妄想の世界にまた入り込みます。
隣家の息子の若い青年がかつての恋人に重なり、若い自分との逢瀬がはじまります。でもこの時は、かつての恋人が老いて、今の老婆の自分に体を重ねてきます。
今の自分の姿を完全に切り離して妄想することもできません。
それは食べなければならないシーンにも現れます。老婆はインスタントラーメンを煮炊きして食べます。妄想の中ではレストランで、少尉とロシアンスープを飲みワインを呷りますが、それで空腹を抑えることはできないからです。
また、このシーンはとても楽しいシーンですが、町内で運動会が開催されます。
どちらというと、老婆を煙たがる大家も、老婆を看取らなければならない医者と看護婦も運動会に参加します。皆、老婆とともに嬉々としています。
これも半分は現実で半分は妄想です。老婆の耳に聞こえてくる現実社会を、老婆にとって不都合がない世界へと美化しています。
人は死で終えます。それは辛いことです。しかも年老いていった末、体が不自由になり、醜くもなり、場合によっては頭も働かなくなるという、老婆でなくても顔を背けたくなる現実の末路で死に至ります。
それは確かに死の直前の己ですが、その己の姿だけが人生の全てではありません。過去も確かに己だったのです。記憶というのは自分勝手な都合が良い空想である場合もありますが、その源は確固たる過去の自分です。
死を迎える今に当たって、こんな妄想をする老婆(役目は駒子です)は愛らしい存在です。そしてこれはあの世へ渡る彼女なりの儀式でしょう。
最後に老婆は襤褸から身支度を整えて、表札をはずして舞台とは違う世界(この時は、日本平の森に出て行くという演出でした)に旅立ちます。
私が死を迎えるその時に直面した時、果たして私は、どんな自分なりの儀式をするのでしょうか?それを深く考える劇でした。
“沈黙劇”として上演される「小町風伝」を、大胆に解釈し、敢えて言葉を繋いだのが、「イ・ユンテク演出の小町風伝」でした。
老婆、絶世の美女の小町ともう一人の女性の語り手の3人が、ト書きも含めたこの戯曲の沈黙部分を語ります。
老婆は今と妄想時の心情を、美女の小町は若き日に愛するものに伝えた言葉を、語り手は現実の老婆の想いを、役割分担して沈黙部分の全てを露にします。
3人共に実は彼女自身で、今の目の前の老婆の姿だけが彼女ではないということを強く感じました。
この演出はとても大胆ですし、役者達も躍動感ありながら繊細でかつ大胆な演技でした。
解釈に賛否はあるでしょうけれど、私には絶賛したい演劇でした。