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黄金のアデーレ 名画の帰還 2015米/英 サイモン・ケーティス
ユダヤ人であるがために、第二次世界大戦時に、祖国からアメリカへ逃れざるをえなかったマリア(ヘレン・ミレン)、その一族は上流階級だったがために所有していた数々の美術品をナチに没収されました。
翻って現代(1998年)、マリアの姉の死をきっかけに、マリアは今生存している自分が、一族(マリア)が所有権を持つ美術品の返還を求めることに決めまず。その中には、オーストリアのモナリザ「黄金のアデーレ」が含まれています。
合法的にはマリアに所有権がある“黄金のアデーレを含めた数々の美術品”ですが、国の至宝をオーストリア政府は手離すわけはありません。
マリアはダメ元で親友の息子の弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)に返還されるかを打診します。
ランディも懐疑的にこの案件に携わるのですが。
オーストリアが国を挙げて負の遺産に挑む事になるマリアとランディです。
いくら分があるとはいえ、相手は一国ですから一筋縄にはいかないと言うものではない位途方もない道のりです。
オーストリア政府には却下され、一度目の絶望ですが、ランディは道を探します。
なんとかアメリカの司法の下へ、この案件を挙げるのです。けれど国際問題だから、この裁判が取り上がれるかは解りません、
けれどなんとか土俵に上がりますが、これが第一歩です。
オーストリア政府との熾烈な戦いが続きます。
心が折れるマリア、それを受けても踏ん張るランディです。
結論はウィーンの評議会へとなります。そこで最後、二人は黄金のアデーレを勝ちとります。
ナチが略奪した美術品の返還という大きな流れを、マリア一族の個に焦点を当てていますが、映画はマリアのその略奪された当時の映像を再現して、大戦はなんだったのか、同じ国にいながらユダヤ人とそうでない民族の虐げられた姿ということと共に、元オーストリア人であったマリアとランディのアイデンティティにまで映画は踏み込みます。
マリアは姉の死がきっかけで、ランディも金儲けがきっかけで、この途方も無い「黄金のアデーレ」の返還を目指すのですが、その動機は変っていきます(これはオーストリア政府に自分は全く悪く無い姿勢に二人がそれを崩そうという動機が働いたのですが)。
個人が一国を相手にするのですから、その逆風は想像できる最悪が襲って来たでしょう。
でもそれを乗り越えた二人の実話です。
二人の成長物語です。
ランディは、この案件は金にあるから始まり、でもマリアのためをおもい、その後、オーストラリア政府が示す理不尽に怒り、それを超えて戦時には自分の肉親もオーストリアの地で果てた事を受け止めて、自分がアメリカ人でありでもオーストリア人でもあることに自覚を持ちます。
マリアも、オーストリアに足を踏み入れることを、一生しないと決めていました。
けれど
足を踏み入れます。もちろん「黄金のアデーレ」を取り戻すためですが、マリアにとつては、そこにいたら死ぬ場所でした。二度と生きたくない地です。
でもマリアも自分を自覚します。
オーストリアが祖国だったことを。でも懐かしさはどうでしょうか?
いまだ残りの戦争の負を、大きな現実を前面に出して、裏ににはその悲劇が起こった実際を挟んで国同士の問題と個の問題には差がないことを訴えます。
マリアとランディは必死になって取り戻しました。
死に物狂いでなければできないでしょう。
そしてこれと同じ案件はたくさんあると言います。
それは彼らの様なエネルギーが無い限り取り戻すことは出来ない。
それをもささやいている映画です。