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セブンス・コンチネント 1989墺 ミヒャエル・ハネケ
造り手からの誘導がない、しかも真実そのものを見せつける、これもミヒャエル・ハネケ監督作品そのものです。
中産階級の一家、夫ゲオルクと妻アンヌ、そしてまだ幼い娘エヴァ、幸せな家族です。ところが、この家族は現世に見切りをつける決意をします。
セブンス・コンチネント=第七の大陸、彼らにとって生きる場所は、その地球上には存在しない場所だった、そのためにとった行動は。
3部作で構成されています。
第一章では、まだ現世にとどまる一家の日常、それが第二章で変化を告げます。この世にとどまれなくなる家族です。
その理由は推しはかるしかないのですが、このままでの自分の未来が観えたことへの絶望という、私達も感じてしまうことを大きく受け入れてしまった家族ではないかと感じました。ではだからと言って、この世に見切りを付けるかと言えば、まずそんな人はいません。けれど、現実にこの家族は存在していました。
そして最後の章ではそれを実行に移す3人です。
一貫して3人の行為をスクリーンに映します。
その方法は、ただただその行為で、行為として現れる前段階の彼らの心は、その流れは、我々に委ねられます。
彼らのとった旅立つ前の行動はあっと驚く行為でした。
物質に溢れた現代社会で生きる上で手にした全てのもの、必要なモノから単に欲しかったモノ、なんとなく手にしたモノ、現世を生きる上でなくてはならないモノまでのすべてを自分たちから切り離すという行為で、それは破壊という行動で現れます。
そして自らの肉体も破壊します。
一貫して3人の行動を、あたかも隣で起こっている臨場感でスクリーンに映します。
凄味がある映像です。
人の奥底にある、自分では認めたくはない気持ちや動機や心を抉り出し、それを目の当たりにする。ミヒャエル・ハネケという人はそれをやります。しかもそれを虚構ではなく、実際に起きたら間違いなく、人はこうなるという真実として、映像で語ります。
目をそむけたくなりながらも、自分の心に染み透ってきてしまいます。
この映画もそれそのものでした。
何故あんなことをしたかは、解りません。絶対自分では行わないだろうけれど、一家の心の機微は痛感してしまいます。
怖ろしい作品です。