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【spac演劇】夢と錯乱 演出:クロード・レジ


1914年に27歳で亡くなったオーストリアの天才詩人ゲオルク・トラークルの詩の世界に誘います。観客にトラークルの心情を、何を問うていたかを、また現実社会の不条理を、受け手の心の深い所に楔を入れて、そこからはその人自身が想うがままに任せます。

漆黒の闇にほんのりと浮かび上がるトラークルの分身が訴えるのは、トラークルに観えていた世界で、破壊、暴力、支配、残虐、絶望で、まるで分身はトラークルの亡霊のようです。

劇場としては小さい箱、闇、ほぼ音響無し、その中での分身の叫びと嘔吐、観客は逃げることができない中で受け入れざるを得ません。造り手は漏らさずにトラークルの想いを伝えたいのです。

以前クロード・レジの「室内」を観劇しました。その時と同じ感覚は、レジは受け手を信頼していることです。今回もそれを強く感じました。
劇の解説のほんの一説に「この演劇は希望がある」と書かれていましたが、濃密な60分にそれを感じることはできませんでしたが、今、もしかしたらレジが受け手を信頼していること、レジのこの強烈な言伝は観客に少なからぬ変化をもたらすこと、それが希望であるように思えてきています。

【いもたつLife】

日時: 2018年05月14日 09:42