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【spac演劇】ロミオとジュリエットたち(ROMEO&JULIETS) 金森穣 演出
Noismという舞踏家とspacの演劇が重なり合う「ロミオとジュリエット」ですが、その舞踏家と演劇の共演という初めての観劇の素晴らしさもさることながら、大胆に翻案してあるロミオとジュリエットでした。
まず、Noismの皆さんの身体能力が凄いです。普段spacの皆さんもかなり鍛えられていると感心するのですが、舞踏家とは、その踊りで台詞も感情表現も、場合によってはシチュエーションさえも現します。そして言葉ほど正確ではありませんが、言葉よりもこちらの感覚に訴えてくるパフォーマンスでした。驚きです。
それに対峙するspacの皆さんも相当稽古されていることが解ります。
そして、大胆な翻案は、なんと病院内という設定の「ロミオとジュリエット」です。
登場人物は患者と病院スタッフに別れます。主役のロミオもジュリエットも患者で、ジュリエットに至っては題名にある通り、複数、5人で登場します。
人が持つ多面性ということで、ジュリエットの複雑な心境の反映でもありますが、この劇のテーマである、現代社会の病んだ部分とシステムをも含めての5人であり、主要登場人物が患者であることは、警鐘です。
システムに組み込まれていること、病院側の手のひらの中で生きていること、場合によっては生き永らえされていることの暗喩です。
そしてラストに驚愕もありました。
ジュリエットが仮死であることを気づかないロミオは死を選びます。目覚めたジュリエットは後追いしますが、その後追いの人物は・・・。
ということで、何故?? でしたが、アフタートークでその、この劇の思惑が語られました。
この劇の影の主役はロザラインで(彼女を演じた井関佐和子さんは、Noismの中でも出色の身体でした)、ロザラインはAIということで(私はサイボーグからロボットを重ねました、またそれそのものを体と表情で井関佐和子さんは再現していました)、AIが人間になる物語でもあったのです。
とても、優れたSFであり哲学的でもありました。
古典的な愛の物語としての骨子を使って現代を風刺し、そして変り行く未来を示唆もしています。
また、その踊りには人の極限の強さも感じる劇で、得がたい体験した。