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万引き家族 2018日 是枝裕和
市井の人達が抱える、表にでない問題を提起しています。
擬似6人家族は幸せな生活を送りますが、社会はそれの継続をさせません。
ルールを破っている者に対しては牙を剥きます。
私たちは教育を受けてきました。その中には、社会のルールは正しくしかも絶対であることが含まれています。
擬似6人家族は貧困です。下の娘役のりん(佐々木みゆ)が拾われるところから物語が始まり、おばあさん役の初江(樹木希林)の年金だけが頼りになる展開にもっていきます。
りんは母から虐待されていたことから家族は一員にします。
父役の治(リリー・フランキー)は日雇い労働者、仕事中に足を怪我しますが、労災がおりません。
母役の信代(安藤サクラ)はパート仕事していましたが、解雇されます。遠まわしの理由はりんを保護していたことで、社会はそれを保護とはいわず誘拐と言います。
上の息子役の祥太(城桧吏)も数年前に治と信代に拾われた男の子で、治によりすっかり万引きを教育されていて、一家の稼ぎの片棒を担っています。
初江の孫の亜紀(松岡茉優)は複雑です。信代の妹役でしょうか。初江とは血が繋がっていない本物の孫です。初江の亡き夫の後妻の孫なのです。ちなみに風俗店でアルバイトしています。
家族は揃って倫理観に欠けています。
足らないものは万引きで調達です。信代も初江もやりますが、治と祥太の連携プレイは見事です。そこにりんも少しずつ加わります。また初江は定期的に夫の家(亜紀の両親)のところへ行き、お線香を上げる名目でお小遣いをせしめます。というように、皆、チンケな罪を犯すことに抵抗なしです。
ここが重要で、メッセージです。
彼等は幸せを、最低限の生活をするための手段を取っているのです。
確かに、治は一生懸命に働こうとしません。多分、それをしても裕福にはなれなかったのでしょう。
確かに、今の格差社会のどこに位置しているかは、極論すれば、その人の努力よりも、運のような気がします。
信代は虐待された過去があり、りんを観ると、その親元には返せないのです。
初江が亡くなります。その時、既に治も信代も無職です。葬式代もなければ、年金不正受給という明日からの糧は手離したくありません。
でも幸せは続きません。この家族の存在が表沙汰になります。そうなれば犯罪一族、治と信代は誘拐犯、死体遺棄です。
物語はこの家族の清算で世の中を語ります。
虐待されたりんはその母の元に戻されます。それを受け入れられない信代は、我侭の烙印です。
祥太はパチンコ屋の駐車場のクルマにいた事も解ります。信代は「拾った」と証言しますが、当然それも認められません。
でも信代は発します。「(初江も祥太もりんも)棄てた奴がいたから拾った」
これも戯言というのが通り相場です。
りんは親元へ、祥太は施設へ、また親を探すこともできる展開になります。社会的には目出度しですが、ラストは擬似親子、治と祥太の切ない別れと、りんが一人ぼっちで遊ぶシーン(その前のシーンは母の虐待を匂わせます)です。
社会的な解決は何の解決にもなっていないことを示唆します。
現在の社会の問題の根深さを物語っています。
治は取り調べで「自分が祥太に教えることができるのは万引きだけだった」
信代は刑務所での治の面会で「祥太とりんを育てるのは私達ではダメ、できない」
でも、社会のルールに沿って子供を戻してもそれが適うとは到底思えないで映画は終わりました。