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ブログ 今日のいもたつ

暖簾 1958日 川島雄三

親子二代にわたる大阪商人を主役に、軽妙に、でも人の生き様をリアルに描く秀作です。

丁稚から暖簾分けをして貰えるまでのど根性の昆布屋のオヤジ吾平とその息子の孝平の二役を森繁久彌が演じます。
明治の終わりから戦後の復興期まで、吾平が昆布屋の大店の主人の浪花屋利兵衛(中村鴈治郎)に拾われて商売を叩きこまれ一人前の商人に育つのですが、ここまでをほぼ冒頭のクレジット場面で示します。それを題名の「暖簾」を絡めてと、スピーディーな映像なのですが、かなり長い年月を2時間に収めていることを匂わせますし、その後もこのリズムで要所要所のエピソードを登場人物の人ととなりと関係性で、最小限の説明で繋ぐ演出は見事です、もちろん脚本も良いです。

吾平は一生懸命働き、お互い心を寄せていたお松(乙羽信子)とは結ばれることはなかったですが、利兵衛の思惑で利兵衛の姪の千代(山田五十鈴)を嫁にします。この千代がまたまた根性が座っています。
順調に店を大きくしますが、室戸台風で店は台無しになります。
でもなんとか立て直すのですが、今度は戦争が店を粉々に、しかも後継ぎの長男も戦死で、流石の吾平もこれまでかとなった折、全く当てにしていなかった次男の考平(考平も戦争に行ったが帰還、吾平は跡取りにする気は全くなかった)が、ある日昆布を仕入れてきて、様相が一変します。
時代は復興期に入り、吾平と千代と考平の頑張りで店は盛り上がり、百貨店に進出、次ぎは東京へ商圏を広げと勢いが出てきます。そして考平の念願の、生家に本店を開業したその祝いの日、波乱に満ちた吾平が笑って旅立ちます。

スケールが大きく、浮き沈みも激しく、でも負けないのが吾平(内助の功の千代も重要)とそれを受け継いだのが考平です。でも時代は流れ吾平のやり方では通用しなくなった時、親に反発できる考平が“暖簾を継いだ”ことで浪花屋は再建していきます。
吾平は利兵衛から分け与えて貰った暖簾を大事にし、考平も同じくその暖簾を復興させるために身を粉にします。そのためにやり方考え方は違い、親子で揉めることもありますが、暖簾の存続に掛ける男を活き活きと描いています。
死んでいく吾平は、千代、考平、娘の年子(環三千世)、そして生涯の夫婦の友になったお松に看取られて、なんと幸せだったかと思わずにはいられません。

豪快で痛快な長い時間軸の話をしっかりと2時間の締まった映画として出来上がっています。

ど根性の大阪商人の吾平と、新時代の大阪商人の考平を森繁久彌が演じ分け好演です。山田五十鈴、乙羽信子も良い味で、他にも豪華キャストが脇を固めます。(中村鴈治郎、浪花千栄子、山茶花究、中村メイコ、夏目俊二等)(ちょっとだけ出た扇千景さんとても綺麗です)
美術も流石の出来栄えでそれらを含めてとても安定感があります。

やっぱり良い映画でした。

【銀幕倶楽部の落ちこぼれ】

日時: 2018年12月24日 09:14