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たちあがる女 2018アイスランド/仏/ウクライナ ベネディクト・エルリングソン
なんと塩梅が良い映画でしょう。
一番印象に残るのは、民俗楽団が主人公ハットラ(ハルドラ・ゲイルハルズドッティル)にいつも寄り添っていること。彼女は過激でタフなテロリストだけれども、正義とは言わないまでも悪魔ではない、なにか自然からの遣いのようにみせています。
だから彼女に肩入れするし、重要な登場人物のおじさんとその犬も、なぜか彼女の身代わりに3度逮捕される外国人バックパッカーも、双子の姉も、ハットラへの協力に厭うことはありません。
ハットラはスーパーウーマンです。たった一人で国家権力に立ち向かいます。
環境破壊の象徴のアルミニウム工場への送電を止めるために、高圧電流の送電線を切ること数回、軍のヘリコプターに、ドローンに追いまくられます。
赤外線カメラにも、警察犬にも逃れます。
最後の大仕事は、なんと高圧電線の鉄塔を倒すという荒行を行います。
そんなランボーぶりのシーンは得てしてしらける要素になりかねないのですが、それを感じさせません。シリアスでスリリングという映画の面白さがあり、そこにおじさんとの交流や双子の姉とのやりとりがあり、それが伏線となりしっかりと回収されます。
全体はほのぼのとしていて、アイスランドの自然の風景と、サスペンスと人情ドラマが絡まりながら進む心地よさの演出は特筆ものです。
またかなり社会風刺が効いてます。それは国家と個の関係で、造り手は一本調子で環境破壊が悪とは言わず、また国家の成り立ち自体も否定はぜず、でも一人の個として、国をどうとらえるべきかの示唆があります。
その国の恩恵を受けることは、その国に従順になることの圧力を受けます。その国に逆らうことは牙を向けられることになります。
でもハットラは生き難い生き方を選んでいます。また、養子縁組という夢を同時に適えようとします。その姿が格好よく、だから、ラストにどんでん返しがあり、痛快でもありますし、深刻にもなります。
良い映画です。