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マレーナ 2000仏 ジュゼッペ・トルナトーレ
マレーナを遠くから愛する片思いしかできない少年が成長してゆくのですが、
魅力あふれるが故のマレーナが、戦争の悲劇と共に、悲劇を被ります。
少年は愛を貫き自分を賭けます。
最後の最後に一言だけマレーネに
「幸せになってください」と声をかけることができます。
この物語は、人の尊厳を犯す人が描かれますが、
戦争という非日常はそれを日常にします。
その中での少年の愛は、非日常でもぶれることはありませんでした。
マレーナは島に戻ります。
島に戻る必要はないかもしれません。
冒険でもあり苦痛でもあります。
しかし、戻って見返すということではなく、
戻って普通に生きることが、過去への決別です。
これからの出直しになります。
ここは私もしかと見届けるシーンです。
これをしなければ次には進めません。
時折の島の描写が鮮やかで、
郷愁を想わせながらラストの仕切り直しと少年の自立を描く、
良い映画でした。
アリスの恋 1974米 マーティン・スコセッシ
自分のための家族が、家族のために奉仕している自分に、いつの間にか。
自分を責める男たちが何故現れるのか。
時に愛するわが子までが、自分を責める一人に思えてしまう。
ただ懸命に信じて生きてゆく、もちろん何も悪いことはしていません。
だけど何故か裏目にでてしまう、人生そんなときはあります。
どこにでもいる母と息子、決して裕福ではなく。
そんなありふれた民に国は何をしてくれるのだろう。
自立することとは、
そんな国や地域から。それと、
自分が思い描く家族や恋人や友人が、
自分にとって常に自分の都合ではないことです。
いつもの考え方を客観視して、少し醒めた感覚を持つ。
ドライだけど頭の片隅にそんなことを入れておきたいということを感じました。
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 2008日 樋口真嗣
期待はしていませんでしたが。
リメイクではなくテイストを入れた違う映画としても、
いやはやなんとも、というのが感想です。
主人公二人の映画として観るものと、
教えられて、そうなのか。
変に納得しました。
映画にも多種類のジャンルや個人個人の好き好きがありますが、
背景の背骨はどの作品でも共通して大事にするものと考えます。
この場合は、戦国という時代と主従関係、領主と領民の関係が
ポイントのひとつですが、それらが背骨として機能していない。
それが最も残念なところでした。
三十九夜 1935英 アルフレッド・ヒッチコック
スピードとリズムで観る側を集中させます。
逃走しながら物語が展開し、スリル、推理、ロマンスがプラスされています。
ヒッチコックらしい作品で、ファン必見です。
シンプルな構成だけに映画の構造もわかりやすいので、
教科書的に抑えておきたいと、
映画好きとして感じました。
毎度のことですが、ヒッチコックの視点は、
ファンを喜ばせることにぶれていないですね。
禁じられた遊び 1952ルネ・クレマン
二人の子どもの行動から、性善説にのっとって、
人がやってはいけない行為、ここでは戦争を通して、それにまつわる、
人には禁じられているはずのことを、平気でやっていること、
その常と、それをおろかと反省する人の本質も語っている作品です。
反戦を語っています。おろかな人間像も語っています。
エゴが強烈に現れています。
子どもの成長に連れての、少し毒された生き様も垣間見ます。
でもこの子ふたりは純粋です。
大人の投影です。
ほんの身近な近所の諍いから、国同士の諍いまで。
本質は同じでそれを訥々と映します。
ただ底流には希望が隠れながら潜んでいると感じました。
ルネ・クレマンは驚かすような仕立てで観る者に訴えます。
この作品でもそれを凄く、そして、素直に受け入れる術で語っていました。
泣きぬれた天使 1942仏 アンドレ・ベルトミュー
「内助の功」は万国共通です。
そして、心を温めてくれます。
第二次大戦のフランスの情景が混じって、それを想わせる光景があります。
でもそれよりも、節々示唆する繊細な描写は、目を離せさせません。
主人公ジャックの心を写す仕草は物語の展開にリンクしています。
人生は自分の意志でしょうか?
ジャックは光を失い、そこからジュヌヴィエーヴの助けを得て這い上がり
社会に認められます。
でも、社会で認められれば、食べてゆけるから、
それでまず安心で、それ以外は蚊帳の外です。
そして、自分の意志を確認します。
もうジュヌヴィエーヴなしではいられません。
実現する事象には、裏に支える内助の功が少なからずあります(あると思います)、
自分が価値を生み出すのは、大事な人との協同作業ですね。
うず潮 1975仏 ジャン・ポール・ラブノー
ひょんなことから、たった二人で島で暮らすようになった男と女。
男は、妻と会社から逃れるため、
女は、暴君の婚約者から逃れるため。
だけど二人ともお釈迦様の手のひらの孫悟空です。
生きながらえてるようなもの、
それを感じながらも、仲良くできないでいる島の生活、
ここでは安住ができません、模索はしていますが、
しかしやはり。そして急展開ラストへ。
冒頭から前半の目を覆いたくなるよううなドタバタは、
当時としては力作の出来で、南米情緒も加味して、魅了しています。
逃れた島では何もならなかった二人が、
別れて数年どう感じ生きてきたのかは一切かけらも
語りません。
二人がこの間に大人(素直)になったのですが。
こういう雰囲気を感じさせる映画も面白さがあります。
どう感じさせるか。
イヴ・モンタンとカトリーヌ・ドヌーブの
ここに至るまでの演技で決まります。
白いドレスの女 1981米 ローレンス・カスダン
白いドレスが光に映し出された演出が美しく、
キーワードの「暑さ」が生々しく、冒頭から惹かれます。
音楽もピッタリ、
練られたストーリーで目を最後までひとたりとも離れさせません。
それらに応えるどころか、それらを御するほどの
魅力をだしていたのがキャスリーン・ターナーでした。
最後なぜ一人でボート小屋に行かせたのかが、
小さくケチを着けるだけだな。と感じるほど、
このジャンルの出色の映画でした。
しかも、男の性を見せ付けるけれど、
お仕着せになっていない按配にも○です。
ヒッチコックで感じるハラハラを
今回感じた映画でもありました。
偉大なるアンバーソン家の人々 1942米 オーソン・ウェルズ
市民ケーンに続くオーソン・ウェルズ第二の作品で、
市民ケーン同様に商業的には失敗。
けれど当時から作品の評判はすこぶる高かったようです。
前作同様、凝った撮影と社会問題を取り上げています。
そして人間個人の性をもテーマにしていて、
たくさんの見どころがあります。
冒頭で、世の変化を上手く演出してその感覚で本編が
流れているようです。
家での舞踏会
クルマと馬車
変わってゆく街と街の人たち
そしてアンバーソン家はなかなか変われず
亡くなって行き、最後には・・・。
人は、大富豪でも天才発明家でも庶民でも
大きな中のひとつのギアとしては同じであること。
変化が必須でそれを肯定するものも、
否定すつものも、その流れを促す一員であること。
それも語られ、
オーゾン・ウェルズが、20代でそれを知り尽くして
表現していることも驚きです。
四十挺の拳銃 1957米 サミュエル・フラー
どんな人格者でも肉親に対して甘くなる。という
世俗的なテーマが背景ですが、
そこに留まらない展開があります。
敵役の姉弟の関係の問題は表面に、
味方役の兄弟の関係は隠れた問題を潜めています。
どちらも人に対して何ができているかを、承認して欲しい。
心の基本の問題です。
二つは悲劇になる、と、ならないに分かれます。
その原因は明らかです。
乱暴な言い方ですが、貧乏の方が
(この場合は恵まれすぎていない方が)
幸せが多いことです。(多いと個人的に感じています)
結局、目先の幸せは人が作り出した幻想かもしれません。
本心が望むものは?
それを埋めるために、無理をして幻想を作っているのが
現代かもしれません。