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ピグマリオン
オードリー・へプバーンの「マイ・フェア・レディ」よりも、
イライザが変わってゆく様や背景や描写は「ピグマリオン」の方が、
私としてはしっくり来ました。(こっちはウェンディ・ヒラーという女優です)
もっともふたつの映画は狙いが違いますから、
それぞれで語られているのでしょう。
痛烈に英国を皮肉る様の描き方はおもしろく、新鮮でもあります。
ストーリー展開にも、恋愛関係の人間心理にもスリルがありました。
残念だったのが、
英語が堪能なら、この映画の醍醐味がもっと楽しめたのに。
日本語だけでなに不自由なく生きていける日本に、
どっぷりつかっている自分がわかります。
英国社会を斜にみているヒギンズ教授が、
一番、英国紳士から抜け出せないという構図も
そんな自分に重なりました。
海辺の家
複雑な家庭環境があたりまえになってきている
その中では、子供はどう育つのでしょうか?
暴論かもしれませんが、
生きることに危機があれば親子関係が問題になることはないでしょう。
しかしこれは空論です。
この世に生きるものはまず生き延びて子孫を残すことが使命ですから。
だから人間社会は繁栄しました。
しかし、こと個々の幸せを検証すると?
どうなのでしょう。
とても狭い範囲、地理的に時間的に身近な人=一番大事な人たちと幸せになりたい。
余命わずかな男がそう決意しました。
その男が実践したことは、生きる人すべてに通じる過程です。
覚悟すること、壊すこと、そして造ること。
日常でこれを意識して出来るようになりたい、
と思いました。
モンパルナスの灯
芸術家が目指すものは、崇高なもの、
今までもこれからも。
そして、駆り立てられて、そこで作品を残すことが我が生命。
凡人にはできない偉大な功績を残した一人がこの映画の
モリジアニです。
自身は不安です。
自分の作品は、理想ですし、評価してくれる少数の人がいるけれど
想いは大衆の評価を気にします。
(本当は、ごく身近が支える親身が全てなのですが。
こんなことは映画を観ているからわかるのですが)
だから悩みます。家庭を持てばなおさらです。
世間一般になる比重が増すからです。
資本主義が、全てを飲み込むブラックホールのように感じました。
しかし、どんな時代でも
その特異を、もちろん本物を、心から自主的に心酔している、
そんな「人達」がいることが描かれているとても良い映画です。
影の車
主人公の男が子供の時に背負った十字架を、
心の奥底に沈めていたのだけれども、
不倫という罪悪感が、それを掘り出し、男を責めることになります。
男の意識の底では、背負った十字架に罰せられたいと、
望んでいたようです。
不倫を認めるわけではありませんが、
男にとってもう一つの生活があることで、
仕事と二つの家庭を理想的に作ってゆけました。
不倫でいることの方が社会的に正解のようです。
しかし、長くは続きません。
もし男があの十字架を背負っていなかったとしたら、
不倫のふたりとそれぞれの家族は幸せだったのでしょうか?
わかりません。
しかしなぜか。
十字架がなければ二人の出会いさえない。
ように思います。
もしくは、違う十字架があれば、違うかたちで自己を責め立てたでしょう。
今回はたまたま不倫であっただけなのです。
オフサイド・ガールス
イランの女性の競技場でのサッカー観戦は罪になることを通して、
イランの男女差別や国の状況を現した映画でした。
直接のサッカーシーンはなし、
わずかに遠めのテレビ中継(とラジオの)実況が時折聞こえてくる
サッカー映画です。
日本では、女性のサッカー観戦が罪になることが理解できませんが、
同じような規制は日本にもたくさんあるので、同じようなものでしょう。
罪を犯す少女達には罪の意識はなく、
取り締まる兵士達も命令で動いているだけ。
ワールドカップ出場が決まれば、一緒に喜ぶところは国民性が伝わります。
イランで女性の社会進出が進んでいることを
象徴しているのでしょうか?
なかなかイランという国を知ることがないので、
触れることができたこともよかったです。
暗黒街の弾痕
単なる冤罪から悲劇が起こる話だけの範疇ではない映画です。
夫のエディは、最初は妻に気兼ねしますが、
妻の気持ちが芯からわかるようになります。
妻のジョーは、夫と結ばれることに“ほんの少し”かも知れませんが、
憐れみがあったのではないでしょうか、
それが本物の愛へ昇華します。
誰がみても表向きは不幸ですが、誰でも得ることが出来ることができない、
二人は真に、愛ある夫婦になります。
皮肉にも追われるからですが。
人が生きてゆく中で、心は空虚な時がきっと多いんだ。
と、思います。
現代の多忙さはそれを紛らわしているのかもしれません。
ラストは自由になる代償の多大さを示しています。
そうです。自由を得ることは難題です。
そして、エディは一人で自由を手にしました。
その自由は何の価値もありませんでした。
映画としての出来もすごく良い出来です。
展開のそつなさや自然な流れがリズムよく、
引き込まれて、あっという間の時間でした。
猿人 ジョー・ヤング
特撮が見物です。「ストップ・モーション・アニメ」
という技法ということですが、並々ならぬ努力を感じます。
1933年の「キング・コング」も素晴らしい技法をみせてくれましたが、
1949年のこの作品もそれからの進化を感じさせてくれます。
今この映画を観ると、キングコングからこの映画の進化、
そして、今はコンピュータを駆使した映像の流れで、
今後ますます、映像の行方が楽しみになります。
キングコングとはストーリーは全く異なっています。
巨大生物の恐れという感じはそんなに現されていません。
しかも結末が違います。
しかし、拝金主義を訴えているのは同じです。
また、映像のスリル感と終盤のジョー(主役のゴリラ)を救う展開のスリル感は、
充分楽しめました。
今ではもう一ひねりを考えるのかもしれませんが、
ジョーと主要な登場人物の心を描くのには充分と思いました。
セーラー服と機関銃
「野生の証明」で初めて薬師丸ひろ子を観た時の印象は、
役どころもあったのでしょうが、
奥深く何か誰も知らない秘密がある、運命的な生まれながらに何かを背負っている、
かぐや姫的な、不思議な魅力を強烈に感じました。
私にとってはこの出会いが、この女優を決して嫌いにならないことを
刷り込まれたようです。
この映画では、当時17歳ですが、
母のような、マリア様的な魅力を感じます。
最近では、10代のときとは全く変わった、
厚さをみせないようにしているような彼女なんだ。
と認識しました。
映画そのものは、冒険的です。
長回しや、ローアングル、天井をはるかに超える高さからの撮影等。
今観ると、当時席巻していた、角川映画の一面を感じました。
浪華悲歌
主人公のアヤ子だけが、自分にとりついている病(ゾンビかも)
があることを知っています。
その病の原因は、家族にあるのに、家族は気がつきません。
(臭いものに蓋をしている自分に通じます)
家族だけが最後の崖っぷちを凌いでたどり着いた
安息の地だと思っていたのに、あて外れです。
家族のために染み付いてしまった態度に嫌悪されたからです。
代償なのに。
アヤ子の行動の「何故?」に注意を向ければ違う真実が浮かぶのに、
それを気づく土台がないことがキーです。
日常はそんなものです。
この映画は犠牲を払ったアヤ子に焦点があてられています。
そのアヤ子の行動は小さい世界では絶賛されるのですが、
(家族も認めないので、絶賛しているのは私だけかも知れません)
現実では非常識です。
個人差はありますが、
やりきれない想いをもって生きている時があるのがのが誰しもでしょう。
それを現実として赤裸々に現したこの作品でアヤ子が家に帰って来た時の描写の、
私の印象は、
「当然努力を認められたいさ」
「でも無償の愛もあるさ」
「家族でしょ」(家族団らんを求める)
「やっぱり帰る場所はここ」
「(赤ん坊のように)無防備になりたかったのに」
それらが見事に裏切られます。
これは、家庭でのことと限られません。
生きる上で出会う時の条件ではないでしょうか。
家族でさえこうなのだからということを自覚することが第一歩です。
70年以上前の映画ですが、
シチュエーションもとてもモダンでした。
(この舞台背景はとても先進的でしょう)
それと同じで、今生きることの「生き方」を考える質問を現代にも投げかけています。
そして、「私と同じよ」と笑っているアヤ子をイメージもします。
フーデックス2009
国内でも最大の飲食料品展なので、毎年1日かけて回ります。
計4日開催の二日間が過ぎた時点ですが、
今年は来場者が少ないとのこと。
親しい出展者から聞きました。
これも不況の影響でしょうか。
今回感じたのは、
ますます個を満たす商品が提供されていることです。
酒呑みとしての感想は、
焼酎が相変わらず元気です。
それとイタリアのオーガニックワインがおいしかった!